その4) モデル
友人が理容師試験を受けるために
俺はモデルをすることになった。
俺は友人宅へお泊りすることになり
朝方 友人の知りあいの床屋へ行き
ヘアースタイルを規定の 7・3分け にして
両国にある試験会場へとむかった。
友人は筆記試験を受けなければならず
俺はプラプラしたり
売店で買った雑誌を読んで暇つぶしをした。
そして友人が戻り 実技試験となった。
俺は友人から注意事項を学んだ。
それは試験中 絶対に口を開いてはならない
と いうことであった。
業界の人がモデルをしている場合もあり
受験者にアドバイスをしていると
試験管に判断される可能性があるからである。
そして 席に座り
俺は友人のなすがままとなった。
緊張からなのか 不慣れからなのか
なんかハサミの使い方が危なっかしい。
嫌な予感が頭をよぎる・・。
そして その予感は的中した・・。
ジョキッ〆
ビクンッ!!
俺の体は一瞬 痛みで跳ね上がった。
あっ・・・
いってぇ〜〜〜〜〜〜
俺は声を出したかったのだが
友人に言われた約束を守り 口を閉口することに集中した。
そうである 友人は俺の耳をハサミで見事に
切ってくれたのである・・。
友人の慌てた顔を想像し
俺はだいじょうぶだから 試験がんばれ!!
そう思い それをアピールしようと
友人の表情を伺った。
なんと 彼
痛みをこらえる
俺を見て
ニヤニヤしているではないか!!
プッツン☆
ちっきしょぉ こいつぅ〜〜〜!!
と 思いつつも 彼が俺のせいで試験に落ちたら
モデルをする意味がまったくない。
そう思い 怒りをこらえた。
また 俺ってなんてイイ奴なんだろう!!
今 抱かれたい男No1に 赤丸急上昇中だね
と ちょっと自分に惚れつつ 頬を染めた。
そして 試験は終わった。
ここには頭を洗う設備もないわけで
俺は便所へ行って 髪を洗った。
便所の鏡に映った 疲れきった表情の
7・3分け男の顔が
なんとも いやはや 涙を誘った。
帰りの電車で二人の会話の話題は
俺の耳の話題となった。
「わりぃわりぃ お前がビクンとなったとき
吹きそうになっちまったよ。」
「この野郎 俺がどんな気持ちでこらえてたと
思ってやがんだよ!!」(怒
「わりぃわりぃ。」(笑
でもまぁ 彼が俺の耳切って
緊張が増し 試験失敗するよりは
ましだなと 思い
笑って許すことにした。
そして彼からモデルのバイト料 1万円を受け取った。
しかし この直後
このバイト料は原付でのスピード違反により
あっけなく国家予算に組み込まれることとなった。(泣
そして 後日 友人の試験結果を知ることとなる。
結果は・・・
不合格・・
「おいおい 俺は耳切られただけかよ・・・。」(痛
「わりぃわりぃ 来年また受けるよ。
今度は別のモデルでやるからよぉ。」(笑
「ほぉ そうかい がんばれよ。」
そして 次の年の試験時期になり
また俺は呼び出されることとなった。(泣
「わりぃわりぃ お前しかモデルいないわ やっぱ。」
「なんじゃそりゃ〜〜〜
これで最後だからな!!」
しかし モデルが見つからないのは
当たり前であった。
俺が耳を切られたことを言いふらしたのだから・・。
自業自得か・・しゃぁねぇ 引き受けたるわ・・。
俺ってなんてイイ奴なんだ!!
今日のイケメンナンバー総ナメだね
と 自分に酔いつつ 引き受けた。
こうして俺はまた7・3分けにさせられ
友人のなすがままとなった。
そして 彼は見事合格してみせた。
「おめでとう。
立派な床屋としてがんばってくれよな。」
「おう まかせとけ!!」
しかし 彼 あっけなくパチンコ屋に就職・・。
おいおい
俺がモデルやった意味
皆無かい!!
呆れて物も言えなかったが
真面目に勤務しているらしく
それ以上 俺は何も言わなかった。
さぁて〜〜
この借りはどこで返してもらおうか?(ニヤッ
華を咲かそう