その1) タイタン




タイタンとは ティターンとも呼ばれ
ギリシャ神話に出てくる。

切り落とされたクロノスの性器から
飛び散った血と大地のガイアが交わって
誕生し 神々に反逆した巨人の名である。


その名を俺は自分の
カブト虫にあたえた。









この頃の俺はイタズラ盛りで
とにかく
色んな小動物が好きで
昆虫もさることながら
カエルや蛇にいたるまで
収集した。


やったら デカイザリガニに遭遇したときなどは
もう大興奮であった。

しかし あり合せの入れ物がない場合は
教科書を川原に置いてザリガニをランドセルに入れて帰ったりした。

なんせ ダンゴ虫も大好きで常に大量にポケットに入れていて
授業中はそいつを取り出して

鉛筆で突っついたり
吹けるかどうか自分のハーモニカの穴全部に詰めてみたり
また 友人のシチューに隠し味として入れてみたり
虫嫌いな女子の筆箱に入れたりと
一日一膳はかかさなかった。


そのため うちの洗濯機は
いつもダンゴ虫の死骸が一緒に回っていたような気がする。
もちろん そんなときは おかんにえらいどやされたのだが・・。


しかし 中でもカブト虫に惚れた。
もちろん クワガタも超マブかったんだが
俺のハートはカブト虫に盗まれた。

なんせ 俺のカブト虫は
他のカブト虫と角相撲させても
負け知らずであった。

しかも 卵から孵化させたので
愛着もひとしおであった。

もう カブト虫内では話にならないので
ついに彼は昆虫の枠を超えた。


俺は スペシャルマッチを開催した。

前売り券は うまい棒2本で闇取引された。

俺とダチが見守る中

まずは

アメリカザリガニ VS タイタン

土俵はもちろん 横倒しになった太い樹木の上なのだが

ザリガニは なんと戦闘開始直後
タイタンに恐れをなして
自らリングを降りてしまったため
タイタン圧勝。

ザリガニ持ってきた奴は
きたねぇよ〜〜〜と叫んでいたが
そんなことは知らない。

そいつから よっちゃンイカ ベーゴマ めんこを没収。

続いて 次の相手は巨体。
タイタン危うし。




 VS タイタン














「・・・・・・・・・・・・。」




鯉はピチピチしているだけ。
そして 楽しそうに 口をパクパクしていた。


相談の結果 鯉を池に戻し
皆 この試合は何かが違うと言うことになり
ノーカウントとなった。

続いて

サボテン VS タイタン




サボテンは超能力使うんだよ
と物知りなダチが何かの本を読んで言っていたので
こいつは もしかしたら
タイタンは念力で
粉々にされてしまうんじゃないかと
心配だった。








「・・・・・・・・。」





サボテンは結局 超能力なるものを
俺たちの前では 使ってくれなかった。

サボテンに戦意がないので
タイタンの勝利となった。

この後も タニシ サワガニ
カエル ゾイド おじいちゃんの入れ歯
キン消し(大) ホワイトベース
鯉釣ったときに川原で拾ったコンドーム
ホカホカの犬のウンコ

など 色々なものと 戦ったが
タイタンは見事 全勝して見せた。


結論から言わせてもらえば 何が勝利条件なのか
さっぱしカンカンだったのだが
そこは まぁ小学生

あくまでも 皆のフィーリングでどっちが勝者か決定していた。


そんなタイタンを誇りと思い
また 可愛がった。

実際 角に紐をつけ
よく 散歩に行った。


寝るときもそばに虫かごを置いて
一緒に寝ていた。


そして ある日 それは起きた。

散歩していて
そろそろ三時ということで
おやつを補給しに家に帰還。

タイタンにもやるかと思い
綱を引き上げた。








「・・・・?!・・・・・」




タイタン!! 頭しかないよ〜〜〜〜〜!!



タイタン!!体はどこへ置いてきたんだ!!


まだ アロンアルファでくっつければ間に合うかもしれない。

俺は食いかけのガリガリ君をもったいないと思いつつも
タイタンのボディを捜した。

しかし 見つからなかった。

帰り道 俺は泣いた。


一体 誰がタイタンをこんなことにしたんだと・・


俺は神を呪った。

そして 悲しみの淵にありながらも
俺はタイタンの墓をつくって
アタリじゃないことを確認した
ガリガリ君の棒を墓標にした。


タイタンの供養も終わり

今はもう空の虫カゴを眺め 泣いた。


俺はその八王子の横綱との思い出や武勇伝を思い出し
その日の夕食は食欲がわかず 食べられなかった。

枕も濡らした。







こうして 次の日 俺は悲しみを乗り越えるために
ニュータイタンを探しに
森へ入った。




華を咲かそう