その9) 猫ボヨン!!






ピザ屋で配達中 色々トラブってきたが
今回の話も飽きずにトラブルです。




事件が起こった時刻はやはり閉店間際・・・。



この時間は気のゆるみにより

デッドリータイム であり

危険がその匂いとともに 大きな口を開けている。



それに飲み込まれること数回
  俺は 色々起してきた。



あと 2〜3件行けば終わりかな


そう思い配達を終え 店に戻る際に
それは起こった。




あぶね!!!!




そう思って慌てて 急ブレーキをする。



ふぅ〜〜・・・・


なんのことはない ただの猫が飛び出してきて
轢きそうになっただけのことであった。



再び フルスロットルでロケットスタート。









あ”ぁ”〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・




今度はときすでに 遅しであった・・・。



さっき飛び出してきたのは 親猫であり

それに続いて 子猫がドバドバ無制限に飛び出してきたのであった・・。





おいおい こんなのトミー&松でも
よけきれねぇだろ!!




三輪バイクの後輪に嫌な感触が走った。





ボヨンっと軽くはずんだ。




あべ・・・・




慌てて バイクを止め振り返る。


一匹の罪もない子猫が どうしようもないほどに
苦しみながらもんどりうっている・・・。



しばらく 眺めていたのだが


やがてそれは 徐々に動きが弱くなり
ピクリとも微動だにしなくなった・・・。


そして 静かに静かに アスファルトに
真っ赤な血が ジワリジワリと広がって行く・・・。





俺はなんともやりきれない気分になった。




生き物の死は 人 動物に関わらず 沢山見てきたつもりだったが
なんともいえない気分になった。




しかも 殺したのは俺・・・。




通りが多い道路ではないが
車道の真ん中であったため

再度轢かれるであろうことを予想し
またそうなることが いたたまれなくなり

静かにその亡骸を運び上げ
道路わきによせた。




そして次の配達が終わった際
店から拝借してきた黒いポリ袋に亡骸を入れ

店先に止めてある
自分の原付の足置き場に袋を置いた。



バイトが終わると 俺は自宅へ帰り
スコップと懐中電灯を持って
うちの畑へと向かった。



パッと見は 人を殺して
山中奥深く分け入り
死体を埋葬隠蔽する犯人であったが
俺もまさにそんな心境であった。





墓標となるべく桃の木の根元を
がむしゃらに掘った。



深さ1mぐらい掘っただろうか。



できるだけ深いところに埋葬したかった。




安らかに眠ってほしかったからだ。






穴の中に子猫を抱き下ろし
静かに土をかぶせる。




埋め終わって 少し盛り上がった土に
供養のために 俺の大好物であるキャメルマイルドに
火をつけ 線香代わりに挿した。



そして コンビニで帰りに買った
ワンカップ大関を ドバドバかけた。




済まなかったという 思いを込めて
俺は静かに手を合わせた。




苦しかったろう 申し訳ないことをした
安らかに眠ってください・・・・



なんとも悲しい気持ちになった。










あとは ちょっと追加で


おいしい桃が
なりますように・・・




と お祈りした。



帰りは俺ってどこまでも偽善者だなぁ〜〜〜と
思ったものだ。




華を咲かそう