その2) 樹海横断

青木ヶ原の樹海
霊峰富士の裾野に広がる
広大な大森林地帯である。


その歴史はさかのぼる事
1200年前の富士の噴火。
そこで流出した溶岩は
1億トンとも数億トンとも言われている。

そこで元々あった原生林は死滅したと
思われる。

しかし ここまで復元するとは
自然とはなんと物凄いものであろうか。

自殺の名所でもあり
この世に悲観し
踏み入る人も後を絶たない。
実際 年に数回 消防隊が
中に入って行方不明者の遺体を
探しにいくそうだが


それはまるで導きあったかのように
折り重なって死んでいるそうだ。




中学2年の夏のキャンプ。
そこで この自殺の名所を
横断するプログラムがあった。

前もって 地図を広げ
樹海を並行して走る 2本の車道を確認。
その間の樹海を横断することとなった。
その距離は2〜3kmしかなかったと思う。

我がワイルドボア班は 俺 Weif班長を筆頭に
隊員5名からなる班であった。
そして もしものときのために
大人が2名ほど 補佐についた。

持ち物は シルバーコンパス(略称 シルコン

ちなみにバストアップに入れるアレではありません。

オイルの入った 方位磁針です。

そのほかに 水筒 ロープ 雨具 簡易食料

などなどだったと思う。

そして 刃渡り 60〜80cmはあろうかと思われるナイフ。
ナイフっつうよりは もはや 剣に近いものがあった。

それを 我々は

ランボーナイフと名付けた。


準備が行われ 我々は日本レンタカーで借りた
2tトラックの荷台に乗り
出発地点にて 投下された。

鬱蒼と生い茂る 樹海。
我々を飲み込もうとばかりに
ひんやりしながらも
どこかしら圧迫した空気が押し寄せてくる。

班員達の目を見て
心の準備ができたかどうかを

確認。


補佐についてくれる先輩方に
出発することを伝える。

まず 入り口付近には 腰近くまである
雑草が生い茂っていた。

それを例のランボーで ぶった斬りながら
直進。

50m程度中まで進入したところで
全員にコンパスを出させる。

コンパスが効かない。

足元に広がる溶岩に含まれる
鉄分などが磁石を容赦なく狂わせるのだ。

そして 何より
どこもかしこも
似たような風景で
方向感覚がまるでなくなる。

空を眺めようにも
鬱蒼と茂った樹葉が
それを遮る。

かろうじて 太陽のある
方角がわかるため
指針のついた時計があれば
大体の方角は分かる。

最悪の場合は木をぶった切って
年輪を見て方角を確認するしかない。


さて 50m地点で我々は
早速 この先どうやって進めばいいのか
悩んだ。


生きて出られるのだろうか?・・

小学校6年〜中2で構成される
我が班員達は真剣に悩んだ。

補佐についた2名の先輩に
なんとなくヒントを授かり
我々は答えを出した。

その方法とは


単純に並ぶこと。


方角を定めたら
それに合わせて 班員が
ある一定の間隔をおいて縦列する。
それを一番後方の班員が直列しているかどうかを
確認。

そして 最後方の班員が縦列の一番前方へ移動。
それを 新たに最後方の班員が直列かどうかを確認。



これを単純に繰り返そうということになった。


目的地になる車道は出発地点の車道に並走しているため
多少の誤差が出ようとも到達できるであろうと
判断したからだ。


これを繰り返しているうちに
雑草の背丈は低くなってきた。
大分 樹海の中ほどまで進んだ証拠だ。

日が当たらないので
そこまで背丈が高い雑草はもはや見当たらない。

ランボーは役目を終え背中に背負われる形となった。


景色は明らかに変わった。
ちらほら 顔を覗かせていた太陽もさっきより
見えなくなり とにかく薄暗い。

雑草の代わりに 今度は足元は
緑に映えるコケで埋め尽くされた。


木々もコケに侵食され枯れ果てているものも
結構あった。

また 木から再び種類の違う木が生えている
わけのわからない木もあった。
根元は寄生された木の根しかない。

なんじゃこりゃ?? と首をかしげながらも
興味をそそられ しばし 眺めた。

俺は専門家じゃないので
どういう理由でその木ができたのかわからないが
とにかく外界ではあまりお目にかかれない樹木だと思った。


そして ポッカリ口を開ける
溶岩の穴。

底がかろうじてあることが確認できる穴もあれば
地球まるごと貫通してそうなほど
深い口を開ける穴もある。


外ではなかなか見れない
溶岩樹形の穴も多数あったかと思う。

溶岩樹形とは簡単に言うと
溶岩でとられた樹木の型ですかね。
それが穴になって残っている。
穴の口径はそんなに大きくないけど
足がズボっとはまるので要注意であった。

そんなとき 補佐についた先輩方がにこやかに
肩に背負っているザイルを指さす。

それが意味するものは
穴に転落した場合
このザイルの長さで足りない場合は

さよなら


と言う 意味を暗示していた。


班員達の顔がみるみる青ざめていく。
皆 慎重に足場を確認し
声を掛け合い
前進していった。

誰もが早くここから脱したいと思っていたに違いない。


そして 誰もが白骨死体の発見を期待しつつも
実際 それとのご対面は勘弁と思っていた。


なんせ 歩みが遅い。
もう 3時間ほど経過している。
今 何km地点なのであろうか?

班員の顔に疲労感が走る。

そして 再び雑草の背丈が長くなってきた。
班員の顔も徐々に明るくなる。

こうして我々は 並走して走る車道へと到達した。
到達所要時間は5〜6時間だったろうか。


大げさかもしれないが
生還できた喜びと
大自然の雄大さを
実感した。








このあと 富士五湖の一つのほとりで
食事となった。

他班とも合流し
皆 声高らかに歓喜した面持ちで
互いに樹海の感想を述べ合う。
なごやかなムードであった。

俺は自分達の不器用な手で握ったおにぎりを
パクついていたのだが
同じく 同級の班長であった友人が
笑顔で ある方向を指さす

ぶほっ・・・・ゴホッ ゴホッ・・・・


俺は思わず 握っていたおにぎりを地面に落とし
おにぎりを吹き出した。


そこにあったものは
そうくっきりと浮かび上がっていた。
くっきりとくっきりと

そう
それは








おばあちゃんのマンすじ!!!!

(地方によってはその食い込みをカタマンとも言う)



おばあちゃんがスカートでガツンと体育座りを決め込んでいたのである。



食欲も不振になったところで
俺達は集合しキャンプサイトへと引き上げていった。

男達の背中は樹海を抜け
女体の神秘を見ることで
少し大きくなっていたように感じる。




華を咲かそう