その3) 出産
男がどうがんばってもできないこと。
そう
それは
出産。
この日 レナは俺の布団で朝 5時ごろだったろうか
激しいつわりと共に嘔吐した。
そのおかげで 俺は
いつもより 心地よい寝覚めとなるのだが。
実際 俺は出産に立ち会うのは
何しろ始めてで
ドキドキした。
これから一体何が起こると言うのか。
朝 7時ごろから
それは 始まった。
レナの股間が ボギョッと
ふくらみ
赤ん坊が顔を出し始めた。
正直 俺にとっては
見たこともない光景なわけで
とにかく 俺の目ん玉は
まんまるも もうまんまるであった。
そして 頭で理解しようとするのだが
何をどうしていいやら さっぱりだ。
こんなとき 男は女に対して
なにもしてやれない。
ただただ 右往左往するだけであった。
がんばってくれと他人行儀に
応援するしかなかった。
無事 元気な子を産んでくれよ と。
そして 待ちに待った待望の一人目が
ようやく その全貌を現した!!
俺がまず思ったこと。
正直に告白します。
普通に
なんじゃこりゃぁああああああ!!
羊膜 胎盤 そして へその緒。
なんか どこもかしこも しわくちゃで
破水した羊水にまみれている。
命の息吹の結晶なんだよな?!
実は俺の子じゃないのだが
因果な関係なもんで
出産に立ち合うこととなった。
ええええ??
そして
な、なんと!?
彼女は
誰に教わったわけでもないのに
赤ん坊のへその緒
そして 羊膜を食いちぎり
胎盤も ムシャムシャ。
ぬ、ぬぬぅ・・・
こんなのを ノーカット完全版で
私は見ちゃってもいいのでしょうか??
心配はいらない。
彼女は犬なのだから。
レナが我が家に来たのは
俺が高2の時だったろうか。
子犬から見てきたが
あれから彼女も立派な♀になり
かねてから我が家にとって念願であった
出産をさせることになったのだ。
そのため 一週間ほど種つけのために
ペットショップへ預けた。
その後 俺が引き取りにいったのだが
レナはものすごい 怯えようで
一体 彼女は♂犬にどんなプレイを強要され続けたのだろう? と
ふと 頭をよぎった。
徐々にだが レナの腹が膨れていくのが
分かった。
どんどん膨らんでいく。
気付いたときには
これ 膨らみすぎだろ!!
ってぐらいに膨らんでいた。
歩行時に普通に腹を引きずっていたからだ。
なんと 腹の中に7匹も子供がいるらしい。
すごい すごすぎるぞ!!
実際 哺乳類は一度に産める数だけの
お乳(乳首)があるわけなのだが
レナのおっぱいを数えて
ふむふむ と納得。
とにかく 食欲がすごかったのは
覚えている。
普段は外で飼っているのだが
このときばかりは室内で飼っていた。
室内で飼う際
犬を室内で飼うと汚れる(外犬なので糞などのしつけはされていない)
という話になり
この家で一番汚い場所で飼うと言う話になり
俺の部屋となった・・・・・。
実際 部屋に帰ると
ティッシュは全部 飛び出して
部屋に飛散。
借り物のセガサターンは
コードは食いちぎられ
オープンしていて
ゲームのディスクは足跡だらけ。
借りていたダビスタの攻略本は小便まみれ
もちろんオレンジジュースをこぼしたと正直に言って返した。
そして 一番気をつけなければならないのは
そう
地雷であった。
裸足で踏むと
その威力は倍加されるため
入室時はスリッパは必須であった。
もしも裸足で踏もうものなら
あっと 思ったときには
足の指の隙間から
ぶにゅぶにゅっとなにかがわきあがるのを感じることでしょう。
あるとき テーブルにあがって
上にあるものを パクついていたので
叱り付けて 下に引きずり下ろしたのだが
ガルガルすごい見幕であったわけで・・・
飼い主 あっさり 負傷・・・(泣
右手を本気で噛まれ 血が滲み出ていた。
そんな過去を振り返っている俺を尻目に
レナもついに 一人目を産み落とした。
そう考えると 少し目頭が熱くなった。
一匹目と同様のことが 6回再び繰り返され
7匹全部出産したときには 正午を回っていた。
犬のベイビー達。
なんと手の平にちょこんと 乗るではないか!!
ちょっと待て 予想以上にかわいすぎるぞ こいつら!!
言葉どおり 今晩のおかずとして 食べちゃいたいぐらいに
かわいかった。
しかし お隣の国のように 俺には犬を食べる習慣はないので
踏みとどまった。
そして 何日かが経過していった。
おっぱいにしゃぶりついている様は無邪気でかわいかった。
そして そんな行為は赤ん坊だけの特権であることも実感。
まだ こいつら目も開いていない。
そして 7匹もいると
おっぱいにありつけない輩も出てくる。
そんなときは だっこして哺乳瓶で
ミルクをあげていた。
それから数日後
悪夢の日々がやってきた・・・
子犬達もデカくなり
一応 ゲージに入れていたのだが
あっさり 破壊・・。
まず 寝覚めは最悪です。
寝る前にゲージに突っ込んでおいたはずの
わんこ達。
脱走して 俺の布団の中に・・。
俺の髪は食ってるし
顔やら足やら手はヨダレでベトベト・・・。
中には人の布団の中に小便垂れるのもいました。
その家畜臭い布団で睡眠するのは実際 かなりきつかった。
出掛けに閉じ込めて行くんだけれども
全部が脱走し
いたずらし放題である。
部屋を開けた瞬間にまず
排泄物による家畜小屋の臭いがする。
一応 床に何も置かないように気をつけてはいたんだが
ドアを引っかいたり 机の脚をかじったり
低い位置の本棚の本は ビリビリ。
そして たたんで積んである布団の頂に
女王陛下が鎮座していて
7匹の兵隊達はそのふもとで大暴れ。
7匹の兵隊達
俺 明らかに部屋の居住権奪われたよなぁ・・・
そして脅威だったのは
新たに導入された新兵器
そう
プチ地雷である。
なんせ地雷ばら撒く兵隊さんが7人もいるから
お手上げです。
そんなこんなで 7匹ともお別れするときがきた。
♀3 ♂4匹だったのだが
♀は全部ペットショップ行き
♂は知合いに引き取ってもらうこととなった。
部屋には平和が訪れた。
彼らが部屋に残していった軌跡を見るたびに
せいせいした感じと共に 何か淋しさがこみあげてきた。
今 彼らは元気であろうか。
元気で過ごしていてくれたなら それで良い。
華を咲かそう