その4) 秘密基地
秘密基地。
いまだに ほしいと思ってるのは俺だけでしょうか?
俺も小学校時代 それを作るのに夢中になったもんだ。
目指していたのは 木の上の秘密基地。
トム・ソーヤに出てくる
ハックルベリーフィンの住まいである。
まずは ダンボールで友人のうちの庭に製作した。
次に友人の家の庭の木の上に作ったのだが
バランスは悪く 皆転げ落ち
おじいちゃんが大事にしてる植木の枝は折れるという
最悪の展開となった。
しかし ダンボールなので 雨天の際
あっけなく とろけてしまった・・。
しかも これじゃ秘密基地じゃないっつうことになり
全然知らない人んちの山に侵入し
やはり ダンボールで作ったが
これも雨でとろけてしまった。
また 他人の敷地であるため
強制退去を迫られた。
その後 ボロボロになった廃車に引っ越した。
わりと住み心地は良かったのだが
普通のセダンのために 中はそんなに広くない。
一人 トランクに入ったら
開かなくなり バールでこじ開けて救助するなんていう
微笑ましい事件もあった。
こうして 今度は橋の下へ引っ越した。
しかし なんとそこには先住民族がいた!!
真っ白いヒゲを腹まで伸ばしている老人とその仲間。
俺達は 三国志好きな友人の助言により
彼は かの黄忠の生き残りに違いない!!
と断定した。
黄忠ってよぉ そんな一杯いたっけか?
しかも あれってよぉ 中国が舞台だろ??
でもよぉ 五虎大将の一人だぜ?
五虎大将!?なんだそれ??
それって つぇえの?
最強!!超つぇえよ!!
まじで?? サインもらっとく??
などと 友人と熱くなったもんだ。
また 友人が
劉備ってどんな人だった?
と 彼に訊ねると
なんか 苦しそうに う〜ん う〜ん
と 唸りとも取れるような声で
返事していたことを 覚えている。
きっと どこぞの戦場で頭を打ってしまい
記憶があやふやになってしまっていたのだろう
と 物知りな友人が言っていた。
しかし そんな黄忠との平和な日々も長くは続かなかった。
ある日 黄忠とその配下で
橋の下で焚き火をして
橋の下の電線を焼ききってしまい
うちの近所一帯が停電してしまったのだ。
それが原因なのか
それ以来 黄忠はいなくなってしまった。
俺達はまだ彼の弓さばきを見ていなかったので
がっかりしたことは 言うまでもない。
きっと 記憶が戻り配下を連れて
戦場に戻ったんだと
物知りな友人が言っていた。
妙に酒臭く
体臭も強烈に臭かったが
きっと戦場では当たり前のことなんだろう。
そして最終的に 俺達は竹を組み
そこに笹を編み込んで本格的な基地を作った。
その間や床にダンボールも組み込み
それは俺達にとって
快挙であり 初の強固な城であった。
僕らの七日間戦争の影響だったのか
ここでみんなで暮らそうって話になり
数名がそんなことしたら おかあさんに怒られるって話をしだし
ばばぁの言うことなんか聞いてんじゃねぇよ!!
と喧嘩になったのだが
結局 みんな 見たいTV番組があったため
なんだかんだで あっけなく 解散。
その基地はいまも残っているのだろうか?
俺は知らない。
そのうち また黄忠と住みたいな。
追伸: 黄忠を見かけたら連絡ください。
華を咲かそう