その8) ビバーク







当時 中学1年だったろうか
某団体に所属しており 週末はほとんど
野外でキャンプして過ごしていた。


同じ中学ではなく 地域の中学生が集うので
様々な情報交換の場所として重宝した。
どこの中学の誰が相当ワルだの
どこの中学の 誰々がめちゃくちゃ美人だの
まぁ 主にそんなくだらない話だったが
色々貴重な体験もできた。


確か中1の冬だったと思うが
まぁ 進級試験みたいな物があんすよね。

初級から2級になるときは
普通に テントを設営して
通常のキャンプを行うだけだが
2級から1級になるときはビバークを行わねばならない。


*ビバークとは 不時泊のことで
テントを所持していない場合や
緊急の場合などに行い
シュラフだけで寝たり
ポンチョやシートなどを
屋根代わりにして 宿すこと。


我々もいよいよビバークすることになり
ペアを組まされることになったのだが
1人余るっつうことで
うちの組だけ 3名になった。


メンバーは 俺 はなまる そしてタケ。


アホ3人の考えることは 多分一緒だ。
3人もいれば 誰かが働くから
寝てればいいだけだと。


支給されたのは ブルーシート一枚だけ。


これをどう使おうが全くの自由で
うまいこと使って夜露をしのぎ
そこそこの防寒対策をして
一夜明かせばいいわけである。


ほとんどのグループが うまいことシートを
三角のテント型に使う中
我々3人が取った道は


箱型!!


まぁ 言うなれば
そこいらの枝木を拾って
骨を箱型になるように組んで シートをかぶせるだけ。

だから ビラビラしてんのよね。
端っこが・・。


めんどくせぇから これでよくね??

寝ちゃえばどこも一緒だよ。

他の奴らは まだ作業してっけど
うちらは もう寝るべ。


やる気 すこぶる0%!!



んで じゃぁとっとと寝るべってことになり
俺 タケ はなまるって順番で
川の字になって寝たんだけど

俺はここでミスを犯したわけよ。
実は平らだと思っていた地面だが
微妙に傾斜があって
俺は低い方 ようは谷側に陣取っちゃったわけ。


まぁ 後々 それを後悔することになるんだが
皆持参した非常食を出して
むしゃむしゃ食い漁って
エロ本読んだり 漫画読んだり
思い思いに時を過ごしてたわけよ。

途中 タケが 小便したいけど
外行くのめんどいから 入り口から発射していい??
と 俺とはなまるに質問してきたのだが

おい 外行ってしろよ と言う前に


彼のノズルからはキラキラと光る黄金水が
滝のごとく溢れていた。





俺・はなまる「・・・・・・・・・・・・・。」




んで 就寝したはいいんだが
タケとはなまるが だんだんズルズルと
斜度のせいで こっちにずれてくるわけさ。


なんか さみーなと思って目を覚ますと
俺だけ外に押し流されて はみ出ちゃってんだよね。


うわー 勘弁してくれよと
寝袋から這い出し
一番山側に陣取って 再び就寝。


今度は一番谷側がタケ その次がはなまる

そして俺は天上天下唯我独尊の山側を征服。


悠々自適に心地よい眠りだったんですが
またもや寒さを感じ 目が覚めると


なんかまた はみ出てんじゃねぇかよ!!


どうやらアホ3人の考えることは
全く一緒であり
タケもはなまるも
俺と同じように外にはみ出て
再び 山側へ陣取ったのである。


くっそー。
結局 朝までその繰り返しとなる。


時折 外にはみ出された者が
闇の中で くっそーと叫んでいる声が
聞く側のときは 無性に心地よかったのを覚えている。


腹の底から ざまぁみろと。


しかし 逆にはみ出たときの悔しさっつったらないね。
あれはまじで 末代まで呪い殺すよね。



でも不思議なことに誰一人として
ブチ切れて 他の奴を蹴り起こすことをしなかったんだよね。


きっとそれをしないことが男達の中で暗黙のルールであり
不思議な友情で結ばれていたのだろう。


男達の愛の挽歌
そして 人間賛歌だね。



あー 生きているって素晴らしい。



どうにか全員寝不足という状況の中
朝を迎えた。


撤営となり 自分らが寝泊りしたサイトを片付ける。
すると 足元に何か不思議な物が落ちている。



なんだこれー あぶねー ウンコじゃねぇかよー。
正に地雷ですよ 地雷。

どこぞの敵軍が仕掛けていった罠なのだろうか。
俺はもう少しで片足を失うところであった。



うちらの寝泊りしてたところから
数10cmのところにそれはあり
どう考えても 内部からケツだけ出して
用を足したといった感じなのだ・・。


事件は難解を極めた。



俺 「犯人はこの中にいる!!」




はなまる 「ああ それ俺が今朝したウンコ。」(照





俺・タケ 「・・・・・・・・・・・・・。」




注意:ウンコは 人から離れてやりましょう。
人に向けて撃ってはいけません。




きっとアホ3人の思うことは一緒だ。


こいつらと組んだ俺がバカだったと・・・。



俺は忘れない。
あの夜 戦友達と 熱い夜を過ごしたことを。
日本に生きて帰るんだと 誓い合った夜を。




華を咲かそう
TOPページ