その11) 日焼け






日焼けは嫌いだ。
それは 過去に物凄い嫌な思い出があるからだ。

俺が幼稚園児だったときに 家族と親戚で熱海へ行った。


我が家はなぜか海って言うと 熱海であった。
聞いてみたことはないが
親の新婚旅行も熱海だったのかも知れない。


そんなわけで 俺は海に興奮し
3歳になる弟と手をつないで
波打ち際で 波と追いかけっこしたり
海岸の砂で砂遊びをして遊んだ。

なにしろ まだ泳げず
沖まで泳ぐことなんてできなかった。

兄と従兄弟は二人でビーチボールを浮かべて
少し沖へ出て遊んでいる。

兄はスイミングスクールへ通っていたため
多少は泳げたようだ。


しかし まんまとビーチボールはさらに沖へと流れ
兄は泣きながら

「もう あれ取れねぇよ〜〜。」

と 帰ってきた。

俺は ばっかだなぁ こいつ
と 思いつつ眺めていたのだが
父が泳いでボールを取りにいっていた。


そんな兄に対し 俺は ばぁかばぁか 連呼していたのだが
父が行っている間
兄は泣き止み 俺に腹を立て
砂を投げてきた。

それは見事俺の顔にあたり
目に入り その痛みで俺は泣き出した。


痛いよ〜〜 お母さん〜〜。


たまらず 母親に泣きつく。

「あんたがお兄ちゃんのこと笑いものにするから
そうなるんでしょ!!」

と 怒りつつも おかんは 顔の砂を払ってくれた。



そんなことは いざしれず
三歳になる弟は その横で
まるで蜂蜜を舐める小熊のように
うまそうに砂を食っていた。





「・・・・・・・」



「お前なに食ってんだよ!!」

と 俺と兄で弟の頭をはたく。


今度は弟が泣き出した。


「コラ!! 弟をいじめるんじゃないよ!!」

と 母が怒り出し 俺と兄は逃げた。


そして 日も暮れ旅館へ戻った。


このとき俺は体中が痛いことに気付いた。

おかんに訊ねたところ
これは日焼けというものらしい。

とにかく痛すぎる・・。

風呂に兄弟3人と従兄弟で入っていたのだが

お湯が熱いし 体が痛くて
湯船に入れない。


しかも なんだ この
海パン履いてたところとの
肌の色の差は!!

お尻が真っ白で
プリンプリンでせくすぃ〜dadadaダイナマイット♪


初めての体験で少し驚いた。


そして オタオタしているところを
兄に見つかった・・・。(ピンチ

めっちゃニヤニヤした顔で
こちらを睨んでいる・・。


どうやら日焼けして体が痛いことを
兄に悟られてしまったようだ・・。(死確定


兄と従兄弟は急いで風呂桶に
熱いお湯を汲み
一斉に俺にむかってかけてくる・・。



痛い 痛い 痛いよぉ〜〜。

俺はしこたま冷水を桶に汲み
兄と従兄弟にむかってかける。


そんなことはいざしれず
3歳になる弟はうまそうに
石鹸を食っている。





「・・・・・・」



「お前なに食ってんだよ!!」





俺と兄で弟の頭をはたいた・・。




うわぁ〜〜〜〜ん(大泣き




風呂場で泣かれると
うるさくてかなわん・・。


俺と兄は急いで風呂場をあとにした。


部屋に戻ると

なんで弟を置いて帰ってくるの!!

と おかんに怒られたことは言うまでもない。


そして 次の日 弟はおかんと
女風呂に入っていたことを記憶している。


しかし 兄に日焼けを知られてしまったのは
もはや致命的であった。






夜は花火大会があり
旅館の部屋からそれを眺めることとなった。

たぁまやぁ〜〜〜
かぁじやぁ〜〜〜

俺は大興奮で日焼けの痛みも忘れて
はしゃぎまわった。


興奮して 窓から乗り出し過ぎて
もうちょっとで 他界しそうになったことは
言うまでもない。



親族一同一つの部屋に集まっていたため
他の親族の部屋は空き部屋であった。

兄と従兄弟はどうやらそっちで遊んでいるらしい。

父達は酒宴を初め
世間話をしながら酒を煽っている。


母は 花火の音にびっくりして
泣きじゃくる弟の世話をやいていた。


俺は花火もいいが
酒の席に出されるつまみやお菓子を狙っていたのだが

それらはとっくに兄の手に落ちていた・・。


取り返さねば 俺はありつけないぞ
と 思い 兄のいる部屋へと向かった。


兄と従兄弟はむしゃむしゃと
それらを食べていた。

俺も食べたいな・・。(涎


「ねぇねぇ 僕にもちょうだいよ。」


「やるか ボケ!!」

と 座布団が沢山飛んできた・・。


ぬぅう・・・。

俺は早くも涙目になった。


腹を立てた俺は兄に飛びかかった。

「なんだお前 やんのか!!」


そう言い放つと 兄は様々なプロレス技を
従兄弟と共に俺にかけてきた。

さそり固めや キャメルクラッチや 足四の字。

もみくちゃになっているうちに俺の上半身のシャツは
伸び伸びになってしまい ほぼ半裸状態に陥り
日焼けした肌が露出してしまった。



そして ジャイアントスィング・・。

兄も俺を振り回すほど力がなかったために
従兄弟と二人で俺の足を片足ずつ持って
俺を引きずりまわした。




背中に激痛が走り
俺は泣きじゃくって悲鳴をあげた。









そして 畳は
血まみれに・・・







俺の弱い皮膚は無残にも日焼けにより
さらに弱り 畳を引きずられることによって
剥ぎ取られた・・。


俺は泣きじゃくり 疲れ果て
そして 息果てた・・。


兄は反応のなくなった俺にはもはや
面白みを感じなくなったのであろう。


俺はそのまま放置となった。

目が覚めると 父が抱いて運んでくれたのであろう。

ちゃんと布団に収まっていた。

次の日はもはや海に入れる状態ではなく

ビーチパラソルの下で
おとなしくしていたのを覚えている。



あの痛みは時々今も
背中に走る。



しかし 学習能力のない男は
この後も日焼けしてしまうのであった・・。



その度にもうごめんだと思っているのは
言うまでもない。




華を咲かそう