その3) 悪魔の自転車


我が家は3人兄弟
どっから見たってむさ苦しい3人兄弟
逆立ちしたってむさ苦しい男根3兄弟

とにかく 母胎の養分一滴も残さず
誕生したと思われる
ガタイのいい長男。

そして容姿端麗辛口
ばくざん先生も唸りっぱなしの
美周朗こと 俺 次男。

そんで 銀のくちばしでゲットした
オマケの三男。


食卓はいつも戦場

母の一声である

「ご飯よぉ〜〜〜〜」

と言う声を聞き逃したり
スタート遅れると
END。


大抵は体格のいい長男にもっていかれる。

冷蔵庫も常に空っぽ。

その証拠に弟が
仏壇にあげてあるりんごを
裏だけかじって
かじってないほうを表向きにして
戻しておいたのは
我が家でも伝説になっている。

とにかく 仲がいいのか悪いのか
まったくもってわからんが
3人はよく一緒に遊んだ。

この事件当時 俺は 3〜4歳だったんだが
兄が自転車を自在に乗れるようになったのを
羨ましく思い 眺めていると

兄が
自分の自転車ではなく 母の自転車を持ってきて

「じゃぁ 後ろ乗れよ」

と優しく声をかけてくれて(年一回あるかないか)
幼児用の取り付け後部座席でスタンバった。


俺はとにかく
初めての自転車にご機嫌の大興奮で
兄に早く発車しろと
催促した。



よし いくぞ〜〜〜!!



二人で掛け声を放つと同時に
その 悪魔の自転車は発車した。

すぐそのあと まさかあの悪夢のような出来事
起こるとは二人とも予想できなかった。

兄はここぞとばかりに ビュンビュン立ちこぎで
自転車のスピードをあげる。
俺はそのスピードについていけず
なんとか 兄にしがみついて
振り落とされないように
努力した。


そして事件は フルスピードで突っ込んだ
そのカーブで起きた。









後部座席発射!!




兄はそのまま 俺がどうなったかも気付かずに
ご機嫌で鼻歌まじりに


逃走。

誰が想像できたであろうか?!
まさか このご時世の自転車に
脱出ポッド機能がすでに備わっているとは!!

ニュータイプもびっくりである。

単にネジが緩んでいただなんて
俺は今でも信じたくはない

そのあと 血まみれになって帰った息子を見て
母がなんと言ったのかは覚えていない。



華を咲かそう