その4) 殺人タックル


兄とはよく遊んだのだが
ガタイの違いから生じる加減の溝は
明らかであった。
この事件当時 俺は確か6〜7歳だったと思う。

兄とふざけるとき
兄は加減しているつもりなのだろうが
明らかに 俺にとっては加減より過剰
だったことを覚えている。

この日は天気も良く
俺はのんきに縁側でひなたぼっこをしていた。

今日のおやつはなんだろなぁ
なんて ぼ〜〜っと思っていると

兄が小学校から帰宅。
いつも このときの兄は
学校から解放された喜びからなのか
妙にハッスルしている

そして帰宅時 兄がまず必ずすること


脱糞!!

きっと この解放感から生じるであろう
便意だったに違いない。

こんなときは俺にとっていいことは
常になかったので
今日も要注意していたのだが

兄がランドセルを投げ置いて

今日もトイレに駆け込んでいく


どうやら 無事 用を足したらしく
水を流した音と 慌しく部屋へ戻ってくる足音がする

俺の名前を呼び
俺が振り返った直後に事件は起きた。












縁側の窓ガラスを突き破って

俺は宙を舞っていた!!



兄の殺人タックルによって・・・




出すもの出して身軽になった
その敏捷性からおりなすタックルは
正に俺にとって殺人級であった。

庭の地面に転げ落ちたときには そこに飛散した窓ガラスが
俺の体のところどころに突き刺さった。
中でも 右内股についた傷は今でも消えることなく
残っている。

その後 血まみれになった息子を見て
母がなんと言ったかは覚えていない。




華を咲かそう