その6) 花火でドッカン
花火。
火遊びは幼い少年にとっては
魔性の遊び
俺も悪ガキとしては
この遊びを ほっとけなかった。
俺もかなり ハマッた。
爆竹
かんしゃく玉
ねずみ花火
線香花火
煙玉
ロケット花火
そして 打ち上げ花火
爆竹にまず 何よりも魅了された。
最初は蟻の巣に差し込んで
破壊。
続いて
空き瓶
かえるの肛門
犬の糞
鯉の口
蜂の巣
徐々にエスカレートしていく。
思えば子供は残酷だ。
そして 俺たちが最後に辿り着いた終着点。
男の中の男を決めるに相応しい度胸試し。
爆竹 犬の
ウンコ一輪挿し!!
何人の男たちが被爆していったことだろう。
火をつけて挿すのをためらい手のひらで爆発させてしまう者
挿したはいいが 被爆して ブツが口に入った者
勢い余って 手でべっちょり逝ってしまった者
開き直ってつかんで投げて見学者にあたり散らす者
正に小学生レベルの度胸試しであった。
かんしゃく玉はコンクリやアスファルトに叩きつけるだけの
シンプルなものだったので あまり多様性はなく
すぐ飽きてしまった。
せいぜい 通りがかる車に轢かせて楽しんでみたり。
自転車で轢いて遊ぶくらいだったろうか。
ねずみ花火も一緒でシンプルに遊んだ。
あとは友達と背中に入れあって遊ぶぐらいのものでした。
線香花火はもちろん
根性試しに用いられた。
じゃんけんで負けた奴の顔の上でパチパチやる。
友情を確認しあう一瞬がそこにあった。
実際のところ友情はあっても 腕がないと
火種が落ちてしまい 証明できなかった。
数名 おでこ火傷する者が出たが
健全な遊びであった。
煙玉にも ハマった。
最初はそのカラフルな煙を単純に楽しんでいた。
続いて瓶に入れてみたり
していたが
終いには何かに投げ込むようになっていた。
公衆電話BOX
賽銭箱
下校時の友人のランドセル
窓の開いている車
友人の家
そして 交番
(もちろんお巡りさん不在中を狙ってだったが)
このあと お巡りさんに追いかけられて
チャリで全力疾走したことは言うまでもない。
そして ロケット花火にも
もちろん 心奪われた。
もちろん最初は打ち上げるだけの
シンプルな遊びだったが
これも徐々にエスカレートしていく。
的を決めて狙うようになっていった。
地面に置いたランドセルに始まり
蜂の巣
通りすがりの車
そして ラブホテルの一室
またはラブホテルから出てきたカップルの車
このあと 通報されて パトカーに追い回されたのは
言うまでもない。
じゃんけんで負けた奴が的になり
バットで打ち返してみたりもした。
最終的には花火の火薬を取り出して
火薬の量を増やして遊ぶようになっていった。
そこで開発されたのが
ペンシルロケット。
鉛筆が短くなったときに
その鉛筆につける
アルミのソケットを
皆さんご存知だろうか?
それにめいいっぱい火薬を詰める。
火薬を詰めているときは
皆わくわくだった。
そして 完成を迎えた。
導火線を長めにとり
皆 神社の石垣に隠れて
コンクリートの塀に向けて
発射!!
「・・・・・・・・・・・・・・・」
皆その威力に圧倒されて
皆 声を失った。。
コンクリートが簡単に
抉れていたのだ。
恐ろしい殺傷力を持つ
兵器を手に入れてしまった。
俺たちは相談した結果
ペンシルロケットは 以後
封印することとした。
こうして ペンシルロケットは
特許出願することもなく
また人を殺めることもなく
闇に葬り去られたのであった。
そして 一番破壊力のある花火
打ち上げ花火の登場である。
基本的に地面に設置して
パラシュートを誰が一番早く取るか競っていた。
しかし 2チームに分かれて
戦争ごっこで各種の花火を用いるように
なってからは
もっぱら 打ち上げ花火は大砲の役目をしていた。
なんせ 我々の軍事力は
優秀な花火使いが
チームにいるかいないかはもちろんのこと
財政に恵まれた友人と同じチームになれるかが
一番の問題であった。
そして リッチな友人がうちのチームに加わり
メンバー全員というよりは そいつ一人に
銭きらせて 花火売り場で
見るからに強力そうな
一番ドデカイ奴を 説得というよりは
なかば強引に買わせた。
ルールもくそも実際はなかったわけなんだが
使用武器はBB弾による エアーガン。
これは貧富の差が激しく 持ってない人間の方が多かった気がする。
友人の兄が改造したというエアーガンは
アルミ缶にも簡単に穴が開くため
脅威であった。
そんなときに限って 何でか知らんが
小学生にありがちな
コードュロイの横玉出そうなぐらい短い
半ズボンを履いてくる馬鹿が必ず一名はいた。
そんな奴は格好の餌食になったことは言うまでもない。
そして 花火各種。
水風船。
カラーバット(竹槍??)。
などなどだったと思う。
作戦会議が双方で始まる。
実際は作戦なんてことは一切話していなくて
単純に誰がどの獲物を使うかの口論であった。
できるだけいい武器を入手しなければ
脅し すかしも相手に通用しないため
自分の安全に危険が及ぶ。
俺はこの日は 打ち上げをゲット。
その迫力に皆ビビって
近寄ってこない。
実際 すきだらけで 格好の的になりそうなもんだが
なんせ そのデカさと値段が うちらの間では
史上初だった。
そのためか 皆 勝手に値段とデカさから
どんな威力が秘められているのか
関心を持ちつつもビビっていたに違いない。
そして 仲間がやられていった。
なんせ 俺のは単発パラシュート付きなので
一回撃ってしまったら もう自分の身は守れない。
仲間を助けようがなかった。
そして 敵に囲まれる時がついにきた。
それは こいつをぶっ放して自決するときでもあった。
なにも考えずに導火線に火をつけた。
敵はあっさり 退散。
おいおいと どこにも的がなくなり
困り果てた俺。
しっかり構えて踏ん張るタイミングを間違った。
ド〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!
あっと 思ったときには
体重の軽い俺は後方へ吹っ飛んで尻餅をついた。
しばし 放心状態で
そのあと 反動を受けたお腹に痛みが走った。
うぅぅううぅう。。。
息ができない。
花火の底についている 地面に設置するための
プラスチックがバリバリに割れていた。
息ができなくて 泣きじゃくる俺に
敵軍がトドメを刺しにきた。
耳元で爆竹が炸裂。
息ができないのと頭部を耳をふさぎながら
守るので精一杯だった。
それ以後 俺はデカイ打ち上げ花火を手に持って
遊んだことはない。
注1:花火は大人と一緒に
よく注意書きを読んでから
遊びましょう。
注2: 花火は絶対人に向けて
撃ってはいけません。
華を咲かそう