その8) 流ケツ



22歳の冬だったろうか。
俺は夜勤の清掃バイトをしていて
それが終わると そのまま始発を待って学校へ。
始発の列車内でのみ 睡眠をとるという

微笑ましい 青年やり手実業家生活を送っていた。

そのうち どこぞの ミス・ユニバースから
お声がかかるかもしれないと思い
仕事に励んでいた。

そんな生活を随分繰り返していて
いつからだったろうか
身体が異変をきたし始めた。

まず 立ちくらみがすごかった。

たまにブラックアウト。

目が開いているのに
目の前が真っ暗になる現象のことだ。

実際 戦闘機乗りがよくなる現象である。

高速でGのかかる ループを行う際
機体の腹が外へ向くループは
全身の血液が重力と遠心力で足元へ落ちるため
頭の血もなくなり ブラックアウトとなる。

逆に 機体の上部が外へ向くループは
頭に血が登るため
目は充血し 視界は
レッドアウトになる。

こんなどうでもいい知識により
俺のこの症状は 貧血 によるものであると
認識していた。

数回ほど 列車を降りた際
視界が真っ暗になったため
列車のドアの前に膝をついてしまい
他の乗客の妨げになり
駅員に助け起こされたことがあった。

実際 しばらく何も見えないわけで
盲人と同じように駅員に改札まで
手を引いてもらうことも何度かあった。


そして もう一つのおかしな現象は
うんこが真っ黒だったことだ。

なんかゼリー状で下痢なのだが
ドロドロしている。

なんじゃこりゃと思いつつも
腹痛を生じる下痢ではなかったので
昨日食ったもんのせいだろと思っていた。

実際 小学生の頃なんて
カキ氷のブルーハワイを食いまくって
うんこが緑色だったため
それを自由研究の課題にしようかと思ったぐらいだ。


しかし 連日起こる ブラックアウトにより
少々 危険を感じ
列車を待つ際は
ホームの先頭には立たないようにしていた。

車道付近を歩く際にも細心の注意を払った。


俺は病院が嫌いなので
そのうち 治んだろこんなもん
と思っていたのだが
症状は悪化していくばかり

元々 俺は起立不全症候群だったし
気にしないようにしていた。


ちなみに 起立不全とは インポテンツではありません。
ちゃんと 今でも(毎日ではないですが) モーニング息子。あります。

*:起立不全とは 人間は普通
立っているとき 座っているとき
寝ているときで脳の血圧が違う。

そして普通の人は
それが自動的に変わるのだが
俺の場合 脳内の血圧の変換が行われないため
めまい 立ちくらみが普段から
よく生じる。

風呂上りなどは
のぼせるとブラックアウトになる。

人間の慣れは恐ろしいもので
慣れると せいぜい またかよと
思うだけで気にならなくなる。

そのため 起立不全が悪化したのだと
思っていた。
しかし 自然治癒は起こらないまま
日は経過していった。

あまりにも変だと 思い
ついに俺もその重い腰をあげ
病院へと向かった。

医者に症状を告白し
色々な検査を受ける。


ふう 終わったかと思った そのとき
先生が言った。








「今 出るかい??」



え? やだ 先生ったら・・・ (ポッ


その曰くつきの 糞を出してこいと言う事らしい。

俺は聞く。



「え?・・ここで?」


先生は笑いながら

「ここでされたら 片付けに困っちゃうよ」

と言った。

俺はそそくさと なんか変な容器をもらって
これに入れるの?・・ はずしたらどうしよう?
なんかスプーンないの?と思いながら
トイレへと向かった。

きばったが 俺の気性のせいなんだろうか
出せと言われると出したくない。
そんなわけで いくらきばって
しぼりだそうとしても出なかった。

先生を唸らせるような 一品を
是非 プレゼントしたかったんだが
出なかった。

そして 先生に

「それじゃ 緊急入院ね」

と言われた。




え?先生のとこにお泊り?・・・ (イヤン


「いや この近くの大病院だよ。」


あいにく その日はおとんが
歯医者に保険証を持っていってしまっていたため
俺は保険証を持っていなかった。


そして何より 入院によって
学校を欠席して
今学期見送りになるのが嫌だった。


先生曰く 実際 十二指腸のどこかに
穴が開いて出血しているのは確かだと言う。

その出血量によっては非常に危険な状態だとも。

そう その出血により
俺の糞は 真っ黒だったのだ。


血便とは鮮血で真っ赤なんだと思っていたが
どうやら 真っ黒な糞もデンジャーらしい。

結局 俺はだいじょうぶっす!!
20回近く連呼して先生を説き伏せ
薬で散らすこととなった。

よく睡眠をし
食事を取り
バイトは休み 学校へは出席する生活を
しばらく続けた結果
変な表現ではあるが

うんこが大分 元気になってきた。

正直 自分のしたうんこを
長々と見つめるなんて経験はあんまなかったので
変な気分だった。

うんこをちゃんと指さし確認する

「色よし!!」
「つやよし!!」
「デカさよし!!」
「固さよさげ!!」
「質よし!!」


「面舵いっぱぁああい 南に進路を取れ!!」


「イェッサー!!」


ちょっとした 船乗りの気分を満喫しつつ



「風向きはどうかね?」



くんくん・・・・




「臭いよし!!」



  はたから見たら
スカトロ好きでうまそうなうんこを眺めている人
だったかもしれない。

しかし キャプテンWeifはいたってまじめな海の男になっていた。


七つの大海を乗り越えた頃
俺は立派な海の男となっていた。

無事 出血もおさまったらしい。


それ以後 俺は深夜に
過度の仕事をすることを辞めた。



華を咲かそう