その2) 嬉し恥ずかしバレンタイン
バレンタイン
俺は 気にしてないぜ!!
と 表向きは そんな素振りをしつつ
実際は 誰からももらえなかったら
どうしようと 気にしていたイベント。
しかし ガキだった俺には
その女の子が俺のことを
好きだからどうだと いうことじゃなく
単にもらえるかもらえないかが
大切であった。
しかし もらえたときには
素直に喜んでいたと思う。
なにしろ 俺はブ男だから
それほど 頻繁にもらえるわけではなかったからだ。
でも 当時の俺の頭の中で
乙女心や女心を理解するなんてことは
皆無であった。
俺は男兄弟出身であったし
女性の心理を理解するのは
まだまだ 先となった。
とにかく 何個もらえるか
友人と競い合うことだけを
楽しんでいた。
小学校のときなどは
お礼のクッキーを皆で焼いたりもした。
途中 おじいちゃんの入れ歯のコップの水がこぼれ
クッキーにかかるというハプニングが起こったが
皆で相談した結果 判定は
セーフ!!
ということになり
そのまま 女子に配布した。
食べた女子に聞いたところ
おいしかったという報告があったので
そうかそうかということで
俺たちは真実を告げることはなかった。
中学1年のとき
初めて 本命ラブレター付きの
手作りチョコレートをもらった。
お返しには 要らないキーホルダーを
あげた気がする。
手作りで時間をかけて こしらえたものに対して
要らないキーホルダーなんて
今思えば とんでもねぇなぁと思うが
当時の俺は それで十分だと 思っていた。
うお なんか机に入ってる!!
うお 下駄箱になんか入ってる!!
かばんに入れられていて
自宅に帰って気付いたときは
良かったのだが
大抵は それを発見した瞬間
友人に没収され
声をあげて 読まれることとなる。
実際 俺も友人のそんな現場を発見したときは
同じことをしていた。
チョコをあげた 女性本人から見れば
なんて奴らだという話になるのだが
俺たちはそんな思春期の乙女心を
めちゃくちゃに踏みにじっていたように思う。
実際 バレンタインになると
学校近所の犬が太る。
あるときは 犬がなぜか
手編みらしき マフラーをつけていた。
俺は基本的にもらったチョコは
なんだろうと 食う派だったのだが
友人によっては
髪の毛入ってるかもしんないぜ!!
気持ち悪いよと言って 川に投げ捨てたり
犬に食わせていた。
そして 何個もらえるか
競っていて それには
罰ゲームとして
個数の一番少ないやつは
ジャージ登校となっていた。
バカ正直な奴は
そのまま 一個ももらえずに
罰ゲームをしていたのだが
一部の奴らは コンビニで
チョコレートを自分で買ってきていた。
しかし それは同じコンビニで買うため
同じチョコレートであることが多く
すぐ 自前チョコであることが
発覚した。
中にはラブレターまで自作してくるバカ者がいたが
その筆跡は明らかに彼のものであり
俺たちはそんな彼に同情し 涙を流した。
また このイベントの際
仲間同士で騙しあうことも多かった。
俺のところにも偽造チョコがいくつか
ラブレター付きで きたもんだ。
文体は女子に頼んだらしく
女の字なのだが
明らかに内容がおかしかった。
普通の子は 文章の冒頭から
授業中 あなたを見てると
股間が熱くなりますなんて 書かねぇだろ。
そして 最後に虫眼鏡でみないと
わからないようなサイズで うっちょん
とか 書いてある。
しかも 差出人の名は決まって
クラスで一番人気のない女の子の名前であった。
そして チョコレートも中を開けると
チョークの束であったり
訳のわからん 真ん中に
ビンゴ!とマジックで書き込んである
穴のあいたコンドームだったりした。
そんなわけで 思春期の純情でなければならない
青春時代を 俺たちはお互いを茶化し
冷やかしあって 過ごしてしまった。
俺にチョコを下さった 女性の皆さん
申し訳ありませんでした。
今は女性からのささやかなプレゼントであると
解釈しております。
華を咲かそう