その3) 先生
高校の時の先生は個性派が多く
今思えば ありがたい言葉も頂いたと思う。
特に担任だった先生方には かわいがってもらい
色々お世話になりました。
おかげさまで 僕も立派な大人になりました
と 言えるような大人には 残念ながら まだなってません!!
俺は高校入学と同時に 自分の存在意義に
何か虚しさを覚え すっかり虚無に飲まれていた。
皆が進路やら 恋やら 悩んでいる時期に
ずっと 生きるってなんだ?って考えていた。
何をするのも だるい。
やる気がまったく おこらない。
毎日がつまらない。
なんのために俺は今ここに存在し 生かされてるんだろう??
僕らはみんな生きている なんて歌があるが
どいつもこいつも生かされてるの間違いだろって思っていた。
弱者には 何もあたえられない。
弱者が生かされてるのは 強者に食われるためであり
真理は強者しか 掴むことができない。
俺は今まで生きてきて 何を手にいれただろう?
生を与えられ 名前を与えられ 教育を与えられ
俺を形成する全てが与えられたものであり
自分で勝ち取ったもの築き上げたものなんて 一つもないじゃないか!!
俺のような社会に寄生する ゴミに一体何ができるんだと 劣等感で一杯になった。
いっそ 殺してくれよと 死に場所を求めて
学校にもろくに行かず 無意味に街中へ出て 目があった奴に噛み付き
喧嘩を売ったりもしていた。
「殺せよ〜〜〜!!」
なんて叫ぶために 殴りあいも長くは続かず
相手に コイツ精神イカレてんなと 思わせるだけであった。
大抵は部屋にこもり
布団に寝転がり ぼ〜〜っと天井を眺めていた。
世の中が俺をこうしたんだ!
環境が俺をこうしたんだ!
と 全てを世の中と他人のせいにして 呪ったもんだ。
誰に相談することもなく 急速にそれは進み
やがて 考えることにも疲れ果て
一人 孤独の中でたたずんでいた。
そのため 精神は安定せず 日々おかしくなっていった。
感情は鈍麻し やがて失った。
最終的には 俺のもろい精神は崩壊し
親も俺を諦めて 精神病院の檻へ入れようとした。
どこをどうやって 俺はこっちの世界に帰ってきたのか
よく覚えていない。
そこは真っ暗で光もなく音もない。
時間感覚もなく どれぐらいの時間 俺はそこにいたのかわからない。
熱い寒いは一切感じられず 宙に浮いているような感じで
自分の肉体が存在していることは 一切確認できなかった。
ただ その闇の中に 意識だけが思念体として
そこにずっと存在しているのだ。
それが俺には とっても苦しくて
握りつぶしてくれよと 渇望していたのを
よく 覚えている。
今思えば 単なる甘えである。
毎日が平凡で安定し 刺激に飢えているために
それが幸せであることに 気付かないのだ。
全てを環境のせいにして 一体どうなるって言うのだ。
どん底にありながらも やる奴はやる。
弱者は死ね!!
ただ それだけのことである。
生きることはどこまでも競争なのである。
しかし 例え弱者で どんなに追い込まれようとも
どこまでも 這い上がろうと歯を食いしばって 生きている者もいる。
夢叶わず散ろうとも それに向かって生きた人生は無駄じゃない。
人生は自分との闘いだ。
体裁を気にして 自分に妥協して 一体どうなるっていうんだ。
生きることは 最後まで 自分の望み求める真理を追究することだ。
俺はこれらに対して まだ一つも真理と言う名の答えを見つけていない。
だから まだまだ生き続けてやるつもりだ。
今はそう理解しているが 当時の俺には まだそんな考えはなかった。
高校一年の時の担任は地学の先生であり 熱い先生であった。
先輩から 要注意人物だと 教わっていた。
先輩は授業中 よく漫画を読んでいたのだが
よく その先生に見つかり
掌底突きを アゴに決められ
そして その後 読んでいた漫画で 脳天をひっぱたかれるため
あまり 分厚い漫画や
まして それらを何冊(ジャンプ マガジン等)も読んでいると
それらを全部重ねて ぶんなぐってくるため
危険であると
警告を受けていた。
しかし なんでも 結婚して まるくなったらしかった。
俺は入学早々 出席率も悪く 成績もかんばしくなかった。
そして その先生の授業中 席は教卓の前だったのだが
暇過ぎて ノートも取らず
ペンを立てて 丸く削った消しゴムを転がし
一人ボーリング大会をしていて
スコアを 机に明記していたら
「お前 教師の真ん前で んなことして
ええ度胸じゃのぉ」
と言われ あとで話があるから 地学準備室へ来いと言う。
なんか俺に用か?このおっさんと 思って地学準備室へ入った。
ドゴッ☆
突然 脳天を何者かにド突かれ
目の前に星が出ていた。
タウンページを持って ニコニコした先生が立っていた。
「まぁ そこに座れや」
「はい」
「お前 学校つまんないのか?」
「はい つまんないっす」
「そうか」
「じゃぁ 旅に出ろ」
「え?」
そう言うと 先生は奥からゴソゴソと何かを取り出す。
出てきたのは一冊のアルバムであった。
なんでも 先生はチャリンコで日本一周したらしく
その当時の写真であった。
ペラペラ適当にめくって見た。
そして 先生はまた奥から何かを出してきた。
それはCDであった。
「いいから 旅して これを聞け」
「え?」
それは さだまさしのCDであった・・。
こうして 背中をボンと叩かれ
もう行っていいぞ と言われた。
「え?」
俺は当時 まったく理解できなかったが
今なら 旅は人間を大きくすることぐらい理解できる。
そして 好きな音楽を聴くことによって
自分を励ますということも。
そして 高校2年になった。
今度の担任は英語の先生で
俺は成績不振のため 会議室へ呼び出された。
ここには 学年全部の担任の先生達がおり
学年全部の成績不振者が一斉に呼び出され
この一室で 違う机ごとに担任と対峙して座り
今後どうするかについて話し合うのである。
そして いつもと変らない面子がそこにいた。
「いよぉ Weif
お前今学期も飛ばすねぇ〜〜」
「いよぉ Weif
またお前もかよ〜〜」
「お Weif
今回は俺は学年でケツじゃないぜ!!」
などなど 学年っつうか 社会の落ちこぼれどもから
激励の挨拶を受ける。
そして 担任の前に着席した。
8クラスあるにも 関わらず
俺は学年で成績が最下位であることを告げられた。
隣のクラスの奴が担任に自主退学を勧められている中
うちの担任のわけのわからん話しが始まった。
「いいか Weif
人生はトランプであり ポーカーだ」
「はい??」
また なんか始まったぞ・・。
「 知 体 気 技 徳
を手に入れた者が幸福を手に入れることができるんだ」
「へい」
「お前はまだ どのカードも手に入れていないだろ?」
「はい」
この人 何言ってんだ??
しかし 今なら先生の言いたかったことも分かる。
教育者として 5つの育成のことを言ったのであろう。
知育 体育 気育 技育 徳育
そして あと これには 美育 も必要であると
俺は今 認識している。
俺は高校2年時にあった修学旅行にも
かったるくて 行かなかったのだが
出発当日の朝
担任はわざわざ
行ってきますを 告げに
電話をかけてくれたのを
今でも覚えている。
そして お前本当に行かなくて
いいのか? とも訪ねてくれた。
そして 高校3年になった。
俺はかわらず 学校にも行かず
成績も不振であった。
1学期目なんぞ 3日しか行かなかった。
決して 友人がいなかったわけではないし
彼らがつまらないわけでもなかった。
じゃぁ 何がつまらなかったかというと
全てにおいて 受身になってたからだと
いまさらながら思う。
何をするにも 他人任せで
自分から動き出すのがだるかった。
今日さぇよければ それでいい
と 自分の将来について考えることなんてなかった。
明日死んでもいいやと常に思っていた。
今回の担任は毎晩 自宅へ電話をかけてくる人であった。
「あぁ あぁ」 と
やる気のない生返事をして いつも電話を切っていた。
そして ある日 家庭訪問へ来ると言い出した。
時間通りに来ない。
うちの近所は親族だらけなので どうやら間違えて
そっちへ行ってしまったらしい。
遅れて登場したのだが
あいにく うちのおかんはまだ仕事から帰っていなかった。
とりあえず 茶を出した。
俺は何も会話する気もなく 黙っていた。
先生は何か 俺に対し色々質問していた気がするが
それが なんだったかは覚えていない。
そんなとき おかんが戻り
担任と二人で何か話していたと 思う。
俺は自分のことなのに
まるで他人のことのように聞いていたため
内容はまるで 覚えていない。
その後も おかんの知合いの精神科医から
ジグソーパズルをプレゼントで受け取った。
メッセージが添えてあり
内容は
人間はジグソーパズルであり
他人と思える人間も 全てどこかで繋がっている。
そして これらは1ピースかけても
面白みにかけてしまう。
だった。
俺はこんなもんに興味もなく
すぐ ゴミ箱に放り込んだことを覚えている。
今思えば 劣等感にまみれた俺に
存在意義を植えつけてくれようとしていたんだと思う。
そんなわけで 俺は沢山の人達のおかげで
今日も生かされている。
そして 今思えば 沢山の人達の励ましを受けてきた自分が
かわいくもあり 嬉しくもある。
今日という日は 夢かもしれない。
でも 確実に出会った人々や
俺が日々蓄積していく 経験は
俺を構成する 血と肉になっていく。
そして この血肉はやがて 土に還る。
それゆえに 幻とも受け取れる。
俺も例外ではなく やがて消えてしまう。
生きることに意味や意義なんてないのかもしれない。
それでも いいじゃないか。
俺はこの旅で 様々な人と出会ってきた。
どこへ行くの?と旅先で訪ねられても
いまだに答えられない自分がいる。
どこへ向かおうと言うのか?
なにをしようと言うのか?
そいつを見つけるために
今日も旅しているのかもしれない。
なんの当てもなく 今日という日を彷徨っている。
風来坊として。
華を咲かそう