その5) おかんのビンタ







俺は 少年時代 ろくでもないことばかりしていて
警察にお世話になることも しばしばあった。


やはり 兄弟3人ともなると 男として
それぞれが 比較されることになる。


小学校中学校と兄と同じ場所に進学したわけだが
うちは 三つずつ 年齢が離れているため
兄が卒業した際に 中学入学となった。


小学校では そうでもなかったのだが
中学進学後は たびたび

先生の口から


「お兄ちゃんはそんな子じゃなかったのに」


という言葉を散々耳にすることとなる。


俺は心底それに うんざりしており


どうして 兄は兄 俺は俺という
人間の見方が この人達には できないのだと
常々疑問に思っていた。



親に言わせれば どの子に対しても差別や待遇や処置の
違いなどないのだろうが


当時の俺から見れば

やはり 長男は親から親愛なる期待を寄せられており
末っ子は とにかく かわいい

そう親から兄弟二人は扱われてるように見えた。


俺はほったらかしであり
おかげで 自由なので 束縛されずに済んだわけなのだが
それを利用して アホなことばかりやっていたように思う。


そんなわけで 兄弟の中で
もっとも親を煩わせ 迷惑かけたのが
俺なのである。








あれは いつ何をしたときだったのか
よく覚えていないのだが


帰宅と同時に母が憤怒しており
言葉にもならないような叫びで
俺に怒鳴りつけてきたのを 覚えている。



このババァまたなんか言ってんぜ・・


と 聞く耳もたなかったのだが

その日は違った。


涙が溢れんばかりに 目に涙をため
唇を噛み締め その唇が
プルプル震えていた。


おいおい 何まじになってんだ??


そう思った瞬間 それは
俺の横っつらにきた・・・。









ばちこぉおん☆









いてぇえっ・・・




お袋のまじめな面持ちに
俺は目を向けられず
ただ 痛みをこらえた。




実際感情のこもった この一発は
意味なく どつく おやじの拳骨なんかより
ずっと痛みをともなった気がする。



そして この女性に
俺は 真剣に心配され 愛されているのだ と
理解した。




「済まん・・・」



気づいた時には 自然とこの言葉が出てしまった。














腹を痛めて 俺みたいなカスを
世に生み出してくれた 母さん
感謝しています。


俺はどこまでもカスで
とても 他人に対して胸張れるような人間には
なれやしませんが
カスなりに 生きていきます。








華を咲かそう