その8) 人命救助








小学3年生くらいだったろうか
ひょんなことから俺は
とある女性のたった一つの生命を救うことになる。



この物語は 愛と勇気と英知の物語である。




当時の友人で ○田という友人がいた。

彼はいつも鼻をたらしており
カンフーが大好きな少年で
980円のカンフーシューズを
世界中の誰よりも愛用しており



そして何より 野グソマニアであった。



野グソマニアとは 野グソをすることに
生き甲斐と快感を感じる人々の総称である。


そんな野グソマニアと当時の俺は仲が良かったわけで
彼は登校時 そして 下校時
必ずその習慣を 遂行していた。


そして 耳元で優しく囁いてくるのだ。

「ねぇ 内緒だよ〜♪ ねぇ 内緒だよ〜♪」


「絶対誰にも言っちゃダメだよ〜〜♪」

「絶対だよ〜 絶対だからねぇ〜♪」


こう言ったあとに 彼は野グソをしたであろう
その場所を 優しく告げてくるのだ。


そして 優しく手を握り
その場所へとエスコートしてくれる。


その彼のあまりの紳士っぷりに
世の女性達も 胸をときめかせたであろう。


注)俺は 一切うんこについて たずねてもいないし
連れてってくれとも 頼んでいません!!



そして わー すげぇデッカイうんこだねぇ!!
と言ってあげると 彼は得意気にニンマリ笑ったあと
照れくさそうに 頬を染めるのであった。

これこそが 野グソマニア 世界ヘビー級チャンプ
とも言われる 彼の由縁である。


そんな彼の家に遊びによく行った。

借家で 長屋ではないが
同じ形の平屋が並んでいる。

その一つが彼の家で
部屋は2部屋で キッチン トイレ バスがある。


隣の部屋には 彼の親父がいつもおり
真昼間から 仕事にもいかずに
エロ本をぼんやり読んでいた。


母親は仕事に行っていることが多かったが
いるときは決まって 夫婦喧嘩していた。


あと 彼には3歳の妹がいた。



俺が救った女性とは 実は彼女である。



事件当初 いつもいるはずの父親はいなかった。


友達と俺で部屋で遊んでいると
妹が泣きじゃくる声が聞こえてくる。



一体なんだろうと 友人と隣の部屋へ見に行った。
しかし 隣の部屋にはいない。


あれれと 思って 風呂場も見たが
そこにもいない。


あれれ??


しかし 泣き声がしているのはトイレから。

もしや??と思って ボットン便所の
戸を友人と開けると 妹が便器の穴に腰のあたりまでずっぽり 嵌っている。



友人と慌てて引き抜こうとするが
抜けずに 妹は痛い痛いと泣き出す始末。


どうすんだ これ?

110番しようか??

しかし俺は先日110番へ
戦神丸(魔神英雄伝ワタル参照)を呼び出すつもりで電話して
おかんに ことごとく説教されたばっかりで
(詳しくは 夢中になったこと1.コレクター)

電話に出るおまわりさんは
全部一緒だと思っていたし
きっと 俺の声をすっかり覚えてしまっているに違いない。

なにしろ おかんには
次に110番したら あんた逮捕されて
一生 牢屋に入れられて もう大好きなガリガリ君も
食べられないよと ひどく脅かされており
そんなのは絶対嫌だと 思っていた。


○田は 誰か助けを呼ぼう!!

俺は 逮捕されるからダメだ!!

で しばし 口論になり

じゃぁ 俺達で助けようと言う事になった。


さて どうやって助けるか。


どこかで 指輪が抜けなくなった人が
石鹸や洗剤を 塗りたくって
指輪が抜けたことを 俺は覚えていた。


おい 洗剤持って来いよ


○田は 急いで台所に行き
家庭用の中性洗剤を持って来た。

早速 便器に洗剤をまるまる一本流し込んだ。

妹が泣きじゃくる中
俺と○田は 必死で片方ずつ腕を引っ張った。

せーの!

せーの!


この言葉が何度繰り返された時だったろうか

妹の体が便器から外れた。

妹は 痛かっただからだろうか
怖い思いをしたからだろうか
助かった安堵感だろうか
ウンコ臭い その体で
泣きながら ○田にしがみついていた。


○田も一緒に泣いていた。

なんだか そんな兄妹愛を見ていたら
俺も泣けて来た。

このあと帰宅して おかんに
次の誕生日プレゼントに妹がほしいと
おねだりしたもんだ。

でも ボットンに嵌る妹は要らない
と付け加えると 母は不思議そうな顔をしていたのを覚えている。


小さな人命救助は こうして幕を閉じた。

注)小さなお子様がいて ボットン便所の方
気をつけてください。頭から落ちて 嵌ったら
命の保障はしません。




華を咲かそう