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<4> 僕が家の前に着くと 誰かが玄関先に 仁王立ちしていた。 『ちょっと あんた こんな時間までどこ行ってたのよ?』 『なんでお前に教える必要があんだよ』 『おばさんが心配して うちにも尋ねてきたからでしょー!』 『へいへい』 里佳とも幼馴染で家もお隣さんだ。 彼女は 真面目な子の模範のようなもんで とにかくお堅い性格だ。 悪戯好きな大地のことも 良く思っていないし そんな大地と仲良しの僕に対しても きつく当たってくることがある。 勿論 彼女はクラスでも学級委員長。 煙たがる男子生徒も実際多い。 確かに美人なんだが その生真面目さとお堅さゆえに 近寄りがたいものがある。 彼女の昔を知っている僕としては おかしな気分だ。 昔は一緒に 泥んこになるまで良く遊んだし 物凄いお転婆だったのだから。 小学校2年生までは バレンタインのチョコも 僕にくれていたのに なぜか小3からは くれなくなった。 誰にあげたのか聞いても教えてくれない。 なんかそれも嫉妬しているみたいで嫌だし 何も聞かないことにした。 彼女が変わったのは ピアノや日本舞踊など お稽古ごとをするようになってからだ。 それらに感化されたのか いつの間にか真面目少女を気取るようになってしまった。 僕にはそれが余り面白くない。 時々 無理をしているようにも見える。 とにかく まるで僕の姉か母にでもなったつもりだろうか 玄関先まで着いてきて つべこべ言ってくる。 顔を見ると 次々何か文句を言われそうなので 帰れ!!と 一言だけ言って 玄関の引き戸を勢い良く閉めた。 『ギャァぁああ』 悪気はなかったんだが 凄い剣幕で涙を溜めた里佳が こちらを睨んでいる。 どうやら戸袋に指を挟んだようだ。 余りの迫力に僕は 『ごめんなさい』の一言を言えなかった。 そのまま 里佳は身を翻して 軒先へ走り去って行った。 悲鳴を聞いた母が飛び出してきた。 どうかしたの? 事情を説明すると 母は今すぐ謝って来なさい と言う。 なんだか面倒臭いことになってしまったなぁ。 元はと言えば あいつが悪いんだよ。 何で僕が謝らなければならないんだ。 バツが悪いまま 僕は 里佳の家の玄関前に立つ。 なんかこう気持ちが苛立って なかなかインターホンを押す勇気がない。 頭を何度か かいたり 玄関先にしゃがみ込んでいると 扉が開いて 里佳の母親が出てきた。 うちの母親が 里佳の母親に電話で事情を説明して 怪我は大丈夫かどうか確認したようだ。 挟んだ指は 大事には至らなかったようで 少し腫れている程度とのこと。 ただ 里佳が誰にも会いたくないと 部屋にこもりっぱなしなので もう今日は帰って明日にしたら? と 言われた。 僕は もう平謝りでもいいから とっとと帰って 明日の探検の準備をしたかったので とりあえず 家にあがらせてもらって 里佳の部屋の前に立ち 『ごめんなさい』と 一言だけ残して帰った。 帰り際に 顔を赤らめ酔っ払った里佳の親父さんが どうだー 健児くん 一杯やってかないかー? と 言ってきたが 里佳の母親に素早く一礼して 靴を履かずに持ったまま 裸足で 足早に家まで走った。 あの様子だと当分 口も利いてくれないだろうな。 里佳とは過去にも何度か喧嘩してきたけれど どういうわけか それなりに仲直りして 関係は続いている。 今回も大丈夫だろうと 僕は暢気に構えることにした。 でも 困ったことが一つある。 いつも 夏休みの宿題は 分からないところは全部 里佳に聞いていた。 よく考えたら 僕はまだ 宿題に一つも手をつけていない。 どうしよう・・・。 クラスで一番頭のいい男子学級委員のロクに聞けばいっか。 と 夕食を口にしながら思った。 夕食時も父はいつものように 飲んだくれて 荒れていた。 酒だー 酒持って来い という単語しか発しない。 母が今日の分はこれでおしまいというと テーブルの上にある物を全部 右腕で払いのけて 寝室に歩いて行った。 あの酒癖の悪さは 家族には苦痛以外の何物でもない。 『母さん怪我はない?』 大丈夫よといって 散らかった床を片付けている。 弟の太児は 幸いとっくに別の部屋で寝ているから 問題ない。 いつもこういう場面にいると 怯えきってしまうからだ。 母さん 何かあったら 僕が守るからね。 母が笑顔で見つめ返すのを確認して 僕は部屋に戻った。 お腹が一杯になったら もうスッカリ里佳と宿題のことは忘れて 明日の探検の準備に集中した。 リュックサック 長袖に長ズボン 長靴 ジャンパー 雨具 軍手 タオル ハンカチにティッシュ 懐中電灯に 替えの電池 コンパス 十得ナイフ あとは 地図を描く紙 筆記用具 ロープ 非常食に飴や乾パン 缶詰 水筒 常備薬で 消毒液など。 大体こんなとこかな? 明日が待ち遠しいな。 布団に入ると 僕はすぐに眠りに落ちた。 >NEXT <BACK |