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ハックルベリー・フェロウズ(Huckleberry Fellows)






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8月31日 夏休みの最終日。
僕は例のごとく宿題に追われていた。


いつもは里佳に相談するんだが
今回はロクにお願いして
漫画3冊を買ってやるということで
話がついた。


夏休み分全部の宿題を たった1日で
ゼロから写すだけでも 結構大変だ。


コツコツ毎日やっておけば良かったと
毎年後悔するんだが 今年も例外なく
後悔する羽目になった。


まぁ 今回はロクに相談したので
里佳のくどいお説教を聞きながら
宿題をやらずに済んだのは 大助かりだ。


ロクの答えを全部写すと
きっと全部正解になってしまい
写したことがバレてしまうので
わざと何問か間違えるように写す。


夏休みの日記は例のごとく
全部に今日は何もしなかったと記した。


多分 先生には怒られるんだろうなぁ。
でも 今年は絵日記じゃないだけましだ。


去年は絵日記だったので
1日分の絵につき5秒で
針金人間を一杯描いた記憶がある。


あれは凄い疲れた・・・。
今年はそれがないだけましだ。


問題は自由研究課題なんだが
それはハックルベリーの小屋のできる過程を
写真に撮って現像しておいたので
適当にノートに貼り付けて誤魔化そうと画策している。


それが無理なら 家にある粘土で
適当に15分くらいで象でも作ろうかと思っている。


大地は カブト虫の金太郎の
成長記録をつけていたし


ロクは 大人が読む難しい小説の
読書感想文を出すと言っていた。



基地の中でゆっくりと過ごす時間は
とても心地良い。


宿題がなければ
もっと心地いいんだろうなぁー。




ゲンとはクラスが違うので
宿題の内容も違うんだが
終わったのか尋ねると


『そんなもんは 俺の人生に必要ない』
と まるで何か悟りを開いた人間の様な
口の聞き方をした。


また デパ吉に殴られても知らないぞと言うと
おもむろに腕を組んで
『それが日本男児の生き様だ』と シブイ表情を浮かべ
なんかちょっとした偉い侍か日本兵の将校気取りだ。


彼は一体全体 何様のつもりなんだろう。
表情だけは年末時代劇の宮本武蔵みたいで格好良かったが
何の説得力もないことだけは確かだ。



ロクは全ての宿題は夏休み始めに終わらせてあり
余裕のよっちゃんで 寝そべって漫画を読んでいる。



そして さっきの渋いセリフに酔い痴れながら
窓っぺりで煙草に火をつけるゲン。


イス用に置いてあるミカン箱を裏返した物に
片足だけ乗せ手は腰に当てて 遠くを見つめ
まるで 波止場で海を眺めている船乗り気取りだ。


これで 汽笛の音でも聞こえれば
最高なのになと ゲンがぼやいた。


格好つけるのもいい加減にしろよ
煙いから 外で吸えよと言ったが
夏の空を見ながら この窓から吸うのが粋でいいんじゃねぇか
と 生意気なことを言っている。


そんなゲンのアホの横には 大地の代わりに
大きな花を咲かせている向日葵がチョコンとあった。


大地は今どこで何をしているんだろうか?
少し宿題の手を休めて そんなことが頭をよぎった。








3人が3人とも
思い思いの時間を過ごす。


基地を作って良かったと本当に思った。
こういう時間 こういう空間は凄く落ち着くし癒される。


僕達だけの隠れ家だ。
早く大地もここに来ないかな。


皆で住めたら 楽しいだろうなぁ。




しばらくの静寂の中
なんか焦げ臭いと思ったときには
ロクの本棚あたりに火がついていた。


その横で ゲンが鼾をかいて寝ている。
明らかに犯人が誰かは分かった。


火事だ!!と 僕は叫んだ。


ゲンは飛び起きたが
何が起こっているのか全く理解していない。


急いで 僕とロクで協力し
木の下に置いてあった
飲料水用のポリタンクの水をかけた。


ゲンの寝煙草が原因であった。


小学生で寝煙草をして
小火を起こす 彼の神経が
僕には全く理解できない。


船乗りを気取るくらいなら
本当に船に乗って どこか遠い国へでも
行ってしまえと このときばかりは本気で思った。


ゲンは無意味に
地面にこすりつけるように
済まねぇ・・・と 僕達に土下座をした。


ナイフを出して
腹を切って詫びるよ
とか言い出したので 慌てて止めた。


お前は一体どんな小学生なんだと
本気で小一時間問い質したくなった。


僕達は ゲンを責めること自体
無意味な行為に思えたし 幸い小火で済んだので
二度と基地内で煙草を吸わないこと
しばらく基地には入らせないという条件で
許してやることにした。


何でゲンが煙草を吸うのか一度尋ねたことがある。
いつまでも子供扱いされることが気に食わないんだそうだ。


僕もロクも一度吸わされたことがあるが
不味いし 煙いし 何もいいことがなかったのを覚えている。


シガーチョコでも咥えているほうが
まだましだ。


大地は赤ん坊の頃に 父を肺癌で亡くしているので
絶対に吸わない。


むしろ煙草自体を憎んでいる。


それを知ってか ゲンはなぜか
大地の前では吸わない。


少しは気を使っているんだろうか?


うちの父も煙草を吸うが
ゲンに吸わされて以来
煙草が家に転がっていても
全く興味がなくなった。



どうにか無事に宿題も終えて
ロクに 漫画3冊分の金を払った。


小遣いは多いほうではないので
ちょっと手痛い出費だったが
いつも月初めにお小遣いをもらえるので
つまり 明日には貰える。


まぁ どうにかなるだろう。







帰りに もうすっかり習慣になってしまったが
大地の家に寄った。


表札がなくなっていた・・・。


僕は目をこすり 自分を疑った。


あれ?何で?
どうして?


親友のあいつが何も言わずに
どこかへ引っ越すはずもない。


僕は慌てて双子の家に走った。
3人で確認しても 大地の苗字である『西岡』という表札はなかった。


大地が何も言わずに引っ越したのは
僕達にとって 大事件であり衝撃であった。


僕は大地との思い出が
色々頭の中を駆け巡り
結局 朝まで眠れず2学期の初登校日を迎えた。


眠い目をして 玄関を出ると
里佳が立っていた。


僕が寝坊すると思って
わざわざ迎えに来たらしい。


余計なお世話だと思ったが
仲直りのきっかけだと思って


大きく深呼吸してから
思いっきりでかい声で おはよう!!
と 耳元で言ってやった。


里佳は耳に指栓をして
どうして健児はいつもそうなの
と 怒り出した。


悪い悪いと言いながら うすら笑いを浮かべて
僕は謝った。


僕のランドセルに
里佳が思いっきりパンチを放った。


僕は咄嗟のことだったので
ちょっと ふらついて
家の横にあるドブに左足がはまった。


これで お相子ね♪


と 今度は里佳が
ムカつく笑顔で言った。


何がお相子なもんか。
僕は靴は一足しか持っていないのに・・・。


家の水道で
左足を靴ごと洗って
そのまま 2人で登校した。


左足が歩く度に チャプンチャプン言って
ドブ臭くてかなわん。


里佳は そこにつけこんで
健児ドブ臭いよと ニタニタ顔で嫌味ったらしく
何度も言ってくる。


僕は少し頭に来ていたが
まぁ 自分の蒔いた種だと思って
グッと堪えた。


大地のことを里佳に相談しようと思ったけれど
余計な心配をかけても仕方ないので
言わないことにした。


『指はもう大丈夫なの?』


『おかげさまでね!!』


と 不機嫌そうな顔で里佳は答える。


『あんときゃ悪かったよ 許してくれよ。』


『うんいいわよ その代わり お願いがあるの。』


里佳が僕にお願いがあるなんて
めったにないことで 僕は驚いた。


『どんなお願い??』


『実はね・・・。』


里佳は思い詰めたような表情になり
黙り込んでしまった。


突然 気丈な笑顔に戻ると
また今度にするねと 言い出した。


僕は途中で言いかけは良くないし
ずるいと言ったんだが


そう言うと また里佳の表情が曇ったので
じゃぁ また今度でいいよと言った。





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