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ハックルベリー・フェロウズ(Huckleberry Fellows)






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里佳と約束して以来 毎日登校して来たが
ついに最後の日がやってきた。


仲良く彼女と登校していても どういうわけか
特別 僕らを冷やかす仲間はいなかった。


普通は真面目な学級委員長と僕みたいなのが
仲良くしていれば スキャンダラスな事件だと
皆ふざけて 冷やかすもんだけど


家が隣ということもあり
前々から2人で登校することもあったので
皆 特別意識することもなかったんだろう。


クラスで彼女のお別れ会がしんみり行われた。
恒例のレクリエーションゲームであるフルーツバスケットや
イス取りゲーム ハンカチ落としなどをやった。


それ程 盛り上がったようには見えなかったが
里佳は満足そうな顔をしていた。


彼女と仲のいい女の子達が
こぞってプレゼントや手紙を渡していた。


気丈な里佳もありがとうと
珍しく涙をこぼしていた。


あとは放課後 何名かの男子生徒が
彼女にラブレターを渡していた。


何だ 思っていたよりも
モテるんじゃないかと 冷やかすと
苦笑いしていた。


私は健児が一番好きなんだもんという
ラブ光線染みた視線を投げかけてくるので
わざと そっぽを向いてやった。



下校時に 里佳を連れて秘密基地へ連れて行ってやった。


双子は 大地を連れて来る手はずになっている。
本当は僕が大地を迎えに行きたかったんだが
きっと ロクはいいとして ゲンが里佳を連れて来るのは
不可能だろうという話になり こういう段取りになった。


里佳は凄く嬉しそうな顔をして
まずポストを 仕切りに覗き込んでいた。


なんだか鳥の巣箱みたいだね
と 痛いところを突いてくる。


余りにも 熱心にポストを眺めているので
まだ 誰も一通も書いてねぇから
心配すんなと 言ってやった。


ちょっと むくれた顔をして
基地へ上がる梯子を昇って行った。


僕も続いて梯子を昇った。


ふざけて 里佳の尻に触ると
このスケベ!!と 里佳の足が
顔に向かって飛んできた。


いててっ まだ完全には
父に殴られた傷が癒えたわけじゃないのに。


むやみやたらと 女性の体に
触るもんじゃないなと 思った。


基地を見るのが初めての里佳は
興奮気味にあちこちに目を泳がせていた。


ロクが集めた漫画の本棚や
ゲンの集めた悪趣味なゴミだか分からない吸ったタバコの空き箱や


僕と大地と双子の4人で肩を組んで撮った5年生のときの林間学校の写真
大地のヒマワリが枯れてしまったので その代わりにとロクが引き伸ばして持ってきた
ゴッホのヒマワリの絵のカラーコピー


パーティー用に用意したクラッカーや山盛りの駄菓子や
ジュースを冷やすためのクーラーボックス


そして 部屋の端っこに転がっている
ガムテープをグルグル巻きにしてあるダンボールに
特に里佳は興味を示した。


僕は慌てて そのダンボールだけは
絶対に 許可なく開けちゃいけないよと
釘を刺しておいた。


何?とってもエッチな本でも入ってるの?
と 勘繰るようないやらしい視線ながらも
真顔で言い返してきた。


ぶっ。
僕は 興味本位で開けられたら
また 病院のときのような事件に成りかねないので
そんなもんは ここにはないと言い張った。


コオロギは ゲンが大地との約束通り
全て逃がしたはずなんだが
今度は何を捕まえて 何を飼っているか
全く想像が付かない。


何しろ 僕もロクも
何が入っているのか全く知らないし


ときたま そのダンボールが
異臭を放っていることすらあるので
むしろ 開けたいとも思わない。




しかし 里佳は余計に興味を持ってしまったようで
もう エロ本が入っているもんだとばっかり思っている。


ねぇ 皆 どんな本見てるのか見てみたい。
女の人の裸を見て 楽しいの?


いやいやいやいや
本当にエロ本じゃないってば。


確かに女性の裸に興味のある年頃だけれど
そんな物は 僕らの神聖な基地には置いていない!!


断言する!!と 言い張った。


ふーんと大きく鼻を鳴らすと
全く信用できないという横流しな目で
里佳は僕を一瞥した。



そんなとき
おーいという呼び声と共に
双子がやってきた。


病院の許可が降りたらしく
やつれにやつれ果てた大地が
ゲンの背中におぶさっている。


その後ろには 知らない若い女性が
一名付き添っている。


誰だろう?


僕と里佳は慌てて梯子を降りて
大地の下へ駆け寄った。


大地は青白い顔をして
額に汗をかき 気分が悪いという。


服装も入院患者が着る
変な服装のまんまだ。


パンツも履いていないので
少しめくれると 大地の一物がすぐに見える。


やだー と 里佳は目を背けていたが
まんざらでもないようだ。


何かあったときのためということで
看護婦が一名 私服で付いてきたのだ。


知らない女性かと思っていたが
例のコオロギがスカートに入った看護婦さんだった。


多分 8名くらいまでなら
この基地は上っても大丈夫だから
大人1名くらい増えても大丈夫だろう。



とりあえず 梯子すらもう昇れない大地を
基地内に担ぎ上げて
用意しておいたブランケットの上に横にならせた。


大地は顔色こそ 優れないが
やっと来れたという思いで感無量だったんだろう
突然 目に一杯の涙を溜めて
男泣きした。



盛大にパーティーを始めるつもりが
大地の男泣きから スタートしてしまった。


何の空気も読めない男が
突然 クラッカーをパンパン鳴らし始めた。


『大地 基地デビュー おめでとう!!
里佳も 引越し おめでとう!!』


里佳は少し怒った様子で
引越しは 嬉しくないから おめでとうじゃないでしょ!!
と ゲンに一喝入れていた。


看護婦さんは 突然のクラッカーにびっくりしていて
耳を塞いでいたし 何しろコオロギ事件の張本人に対し
警戒心を抱いているように見えた。


そして 例のダンボールに目をやると
僕達に このダンボールは大丈夫なんでしょうね?
と 確認をしてきた。


里佳は益々中身に興味を持っていたが
ゲンが開けなければ大丈夫だよと 看護婦に念を押していた。


漫画好きのロクが
まるで ドラゴンボールの
ピッコロ大魔王の入った炊飯器みたいだなと言った。


僕と大地は可笑しくなって笑ったが
全く漫画を読まないゲンは キョトンとしていた。


まぁ 乾杯しようやと
ロクがクーラーボックスから
キンキンに冷えたチェリオを人数分取り出す。


大地 神社から汲んできた
湧き水なら飲めるか? 一応冷やさずに常温にしてある

と ロクが聞くと
大地は ゆっくりと頷いた。


看護婦もキンキンに冷えた冷水でなければ
大丈夫だと言う。


皆が飲み物を手にしたところで
僕が乾杯の音頭を取った。


皆の友情が永遠でありますように!!
乾杯!!


キンキンに冷えたチェリオは
やっぱり うまいなぁー。


看護婦さんも徐々に
子供のお守りといった感じだったが
少しずつ童心に返ったのか
僕らに対し友好的になってきて
渡辺と言いますと自己紹介してくれた。


あー 本来 俺が紹介すべきだったね
ごめんなさいね 渡辺さん


と大地が看護婦さんに謝っていたかと思うと 今度はおもむろに
天井を指差している。


皆で見上げると
そこには 下手糞に打ち込んである釘が
1本だけ出ていた。


あの下手糞な釘は健児が打った奴だろ?
と 大地が言い出すと


皆が そうだそうだと言い出す。
確かにあれは僕が打ち込んだ釘に違いなかったが
あんなに下手糞じゃないと言い張った。


里佳が横で だっさいわねーと言い
渡辺さんもクスクス笑っていた。


畜生 皆でコケにしやがって。
でも あんなに嬉しそうな大地を見るのも
久しぶりだし 話のネタにされるのも悪い気分はしなかった。



基地作りの思い出話や
防空壕探検の話
病院でのコオロギ事件の話など
主に今夏に起こった出来事を談話して
盛り上がった。


突然 大地が
俺の育てたヒマワリはどうなった?
と 聞き出したので
種にして取ってあると
乾パンの空き缶を指差した。


大地は あの時した
もし俺が死んだら ヒマワリの種を撒くという約束を
忘れてはいないだろうなという視線を僕に送ってきた。


僕はそれが辛くて
手の平を自分の両目にかぶせて
目を眠そうにこする振りをして
大地の視線を遮った。


そんな折 ロクが本棚の奥に何か隠していたのか
ゴソゴソと 黄色い布を取り出した。


皆にプレゼントがあるんだ。


それは5枚のTシャツだった。


これは俺達の友情の証だ。
サイズが合うか分からないけど
着てみてよ。


ロクが皆に配り
早速 一斉に着てみた。


5枚って 私の分もあるの?
と 里佳が驚いていた。


ごめん 渡辺さんの分までは
さすがの俺も想定できず 用意してないんだと
ロクが丁寧に謝った。



着てみるとサイズはぴったりだった。


丁度 左胸の辺りにワンポイントで小さなヒマワリのマークが入っていて
背中の中央辺りに ハックルベリー・フェロウズ(Huckleberry Fellows)と
英語でシンプルなロゴが


左の袖口に漢数字でナンバーが
右の袖口には それぞれの名前のイニシャルが入っている。


黄色は 皆の好きなヒマワリの花の色


んで 壱は 西岡大地でD・N
弐は 相馬健児でK・S
参は 黒部元助でG・K
四は 俺 黒部麓助でR・K
そんで 五は 天海里佳でR・Aだ。


ハックルベリーはこの基地の名前である
ハックルベリー・フィンの小屋からとって


フェローズとは 悪い仲間を指すんだと
博識なロクが 珍しく雄弁に解説した。





とりあえず 大地の体を半分起こして
着ている服の上からTシャツを着せてやった。


大地は大喜びで
こいつは宝物にさせてもらうよと
涙ながらに言った。


あとは 別バージョンで
幟(のぼり)も作ってみたんだと
ロクが得意気に取り出して見せた。


幟って何だ?と
ゲンが聞くと


昔 戦国時代に侍達が使っていた旗だよ
と ロクが答えた。


おー 基地に飾ったら格好いいねと
一同が目を輝かせた。


そして 記念撮影をしようと
ロクがカメラをリュックから出した。


こいつは 何て準備がいいんだろうと
改めて 驚いた。
弟とはえらい違いだ・・・。


皆でTシャツを着て
記念撮影をした後
とりあえず 大地が長居もできないというので
パーティーは 予定していた時間よりも
早く切り上げることにした。


駄菓子の余り物は全部
里佳への餞別ということになった。


話に夢中で僕はあまり駄菓子を食べれなかったが
なぜか 知らない間に1名夢中で食べていたらしく
その半分以上が減っていた。


クーラーボックスから
取り出したガリガリくんを食べて
これ 当たりだぜ!!と1人で騒いでいた奴がいたような気がする。


皆 他の話に夢中で
誰も彼を気に留めていなかったが
きっと 彼が犯人だと思う。



小屋から大地を担いで下ろすついでに
最後に胴上げしようぜ!と その犯人が言い出した。


いいね!
と 僕もロクも大賛成で


ちょっと待ってくれよという大地のいうことを
誰一人聞かずに
せーの!という掛け声と共に
大地を胴上げした。




が、大地は思った以上に軽くなっていた・・・。

特に約1名が凄い馬鹿力で
大地を力任せに放り上げたもんだから堪らない。


かなり中空まで 彼は飛び立った・・・。
地上から2m以上はゆうにあっただろう。


大地の一物がヒラヒラなびく服の裾から
ポロリと飛び出していた。


慌てて 皆でキャッチできたからいい物の
もう少しで病人を地面に叩き落すところだった。


何も考えていない男が
そのまま もう一度大地を胴上げしようと
先走るので 慌てて 僕とロクで静止した。


渡辺さん曰く
現在の大地の体重は38kgしかないらしい・・・。


大地は嬉しい反面
もう迷惑だから勘弁してくれと笑顔で言った。






とりあえず 皆で大地を病院まで送った。
病院途中の川原で 大地が気分が悪くなったというので
少し休ませてから また出発した。


無事に病院のベッドまで送り届けると
大地は もう思い残すことはないというような
表情を浮かべていて 僕はそれが気になった。


他の皆は 誰も気付いていないようだったが
僕だけには分かった。



負けるんじゃねぇぞと
ゲンが大地の手を握り強く振る。


大地の表情は痛みで歪んでいたが
これがゲンの友情の証だと思って
耐えているように見えた。


里佳もこれでしばらくは会えないので
大地と握手を交わし 軽い抱擁をしていた。


ロクと僕は また来るからねと手を振って
渡辺さんに一礼をして病室を後にした。





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