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ハックルベリー・フェロウズ(Huckleberry Fellows)






<10>





大地の変わり果てた姿が
未だに目に焼きついていて
僕は家に戻っても ずっと放心状態だった。


彼のために何かしてあげられることはないだろうか
そんなことを ずっと考えていた。


その夜 家に一本の電話がロクから入った。
ゲンが家に帰らないと言うのだ。


何か聞いていないか?と問われ
コオロギを取りに行ったことを思い出した。


僕とロクは懐中電灯を持って 神社に集合して
ゲンの名前を叫びながら 例の防空壕まで
斜面を登って行った。


立ち入り禁止の看板とフェンスを乗り越えて
懐中電灯で照らしてみる。


不思議なことにあったはずの入り口がない・・・。


あれ?確かに入り口はここだったよな?
と ロクに確認を取る。


ロクは青ざめた表情で頷く。


ゲン そこにいるのか??
と 二人で叫んでも
返ってくるのは静寂だけだ。


あと 考えられるのは
落盤で入り口が崩れたという信じたくない事実だけだった。


ロクは親方を呼んで来ると
慌てて 山を駆け下り始めた。


僕は ただ待っているわけにも行かず
手で地面を掘り始めた。


柔らかい土はいいんだが
固い部分もあり
40分も掘り続けると
手はささくれだって 爪から
血が噴出してきた。


平たい石を見つけて
それをスコップ代わりにする。


必死の形相で
ずっと同じ行為を
ただひたすら繰り返した。


たまに大声でゲンの名前を呼ぶが
返って来るのは 静寂だけだった。




しばらくすると 斜面の下方に明かりが見え
小走りに斜面を登ってくるロクと
静寂を突き破ってドドドドドと 軽い地鳴りをさせながら
小型のユンボが上がってくるのが見えた。


その他に消防士らしき人達も見える。
僕は助けがやっときたと
全身の力が抜けて行くのを感じた。




ここなんだな?
親方がユンボで 突然フェンスを壊し始めた。


消防士が困った表情で
一気に掘るのは
危険ですからねと 親方に釘を刺す。


『おら ゲン 出て来いや!!』


親方がなかば発狂したようなバカでかい声で叫びながら
その場の空気を振るわせた。


入り口をユンボで少し削ると
中までは崩れていなかったのか
空洞が現れ始めた。


親方のユンボを制止させ
そのあと 大人たちは
丁寧にスコップで入り口を広げ始めた。


ある程度の入り口が確保できると
ヘッドライトをつけた消防士達が
腰にロープを巻いて 近くの木に巻きつけてから
中に入っていった。


防空壕の奥に
ダンボールを抱きかかえたゲンが
倒れていて 担ぎ出されてきた。


心停止はしていないが
極度の酸欠状態にあり
危険だという。


担架に乗せられて
意識のないゲンは運ばれて行った。


僕とロクは彼が後生大事に抱えていた
ダンボールを開けてみると
物凄い数のコオロギが ひしめいていた。


本当にこいつは どうしようもないバカだ。
大地のために こんなに一杯取ったんだろう。


彼の折った 沢山の
紙飛行機も一緒に入っていたが
コオロギは紙や衣類をかじるので


紙飛行機も半分くらいかじられていた。
本当にどいつもこいつもバカばっかりだ。


気付くと僕は頭を抱えて泣いていた。
皆 いい奴なのに
自分が何もしてやれない無力さを呪った。



これで大地に続いて
ゲンにまで 何か大事があれば
僕はまともな精神状態でいられる気がしない。


大切な人達が
苦しんでいる姿を正視していられるほど
僕は強い人間じゃないから。



神社前に来ていた救急車に
親方とロクが乗り込み
集まる近隣住民を横に
走り去っていった。


救急車に乗り込むロクにゲンを頼むと言うと
珍しくこちらを正視して
大きく首を縦に振ると
健児ありがとうなと 一度だけ手を振った。





今日は色々なことがありすぎて
頭の中が整理できずにいた。


どれもこれもショックなことばかりで
僕は家に帰る前にすでにヘトヘトだった。





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