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ハックルベリー・フェロウズ(Huckleberry Fellows)






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渋滞の最中
僕は鮮烈な記憶の残る
様々な小学校生活を思い起こしていた。


友人に訊ねると
ほとんどの友人が
小学校の記憶というのは
そんなにないと答えるが


僕にとっては
小学校6年生の夏の思い出は
一生涯忘れないだろう。


卒業後 地元の公立中学に進学した僕は
1年生の夏に 双子を連れて富士登山をした。


3年生の夏には市内の区画整理で
基地は取り壊された。


最後まで反対し続けたが
行政の強引なやり口で
僕達の沢山の思い出の詰まった場所は潰された。


ゲンが市の職員に
石をぶつけて傷害事件にまで発展した。


幸い傷害罪にはならず
情状酌量の余地ありとなり
ゲンは少年院に行かずには済んだが
僕達の怒りは収まることはなかった。


大地の帰って来れる一番大事な場所が
取り壊されてしまったのだから・・・。


高校1年生時には
アルバイトで単車の免許を取得。


そのままバイトをしながらお金を貯めて
3年生の夏にはバイクで日本一周をしてみせた。


大学時に 上京してきた里佳と
同じ大学に通い 今ではどういうわけか
夫婦になってしまった。










大地の眠る丘の傍に車を停めると
里佳を起こした。


車を降りてから
あくびをし 暢気に伸びをしている里佳を尻目に
僕は軽い準備運動をしてから
里子を抱きかかえ 大地の眠る丘の上に駆け上がった。


まるで 駆けずり回った少年の日々のように
なぜか胸が高鳴る。


三十路になってからは
走るのもしんどいと思うようになっていたはずなのに。


走る速度に合わせて今も胸に下がるタグが
カチャンカチャンと心地良い音を立てる。


その音色が好きなのか
僕の胸に抱かれた里子はご機嫌な笑顔をのぞかせる。


今日は天気がいい。
僕の嫌いな威圧的な入道雲の姿も見えない
遠くまで 青く澄み切った空だ。


ヒマワリ畑も当時のまんまで
僕達を快く迎えてくれているようだ。


煌々と照りつける太陽が
あの夏を彷彿させる。


頂上へ着くと
かつての思い出の町を一望してみた。


所々変わってしまった箇所はあるが
間違いなく 僕らの育った町だ。


遠くには 夏でも雪のかかる富士がクッキリと良く見える。


ゼェゼェと息を切らした里佳が 健児ハリキリ過ぎじゃないの?
と へばった顔で言ってきた。


お前が運動不足なんじゃないのか?と
笑って 里佳の頬をチョンチョンと軽く2回突付いた。


しばらくすると
丘の階段を 待ち合わせより
少し遅れて登ってくる人間がいる。


黒部組の紋の入った上着を来た
浅黒く日焼けした体格のガッチリした男だ。


彼は咥え煙草でこちらを見上げると
日焼けした肌には 似合わない
目立ちすぎる白い歯で
ニコッとこちらを見て笑っている。


そのちょっと後ろから
学者染みた男が1人
何か書物を手に持ち
それを読みながら 丘の階段を上がって来る。


またその背中には大きなヒマワリの鉢植えを
背負っている。


皆 変わらないな あの当時から。
僕は逆にそれが可笑しくて
1人 にやけていた。



ズボンのポケットの中の
懐中時計を取り出すと
14時をちょっと過ぎていた。



少し車に疲れて グズっていた里子が
丘から見える ヒマワリ畑を見て
ケタケタと笑い出した。


まるで 大地がそこにいて
里子をあやしているようにも思えた。


里子を里佳に 抱き渡すと
僕は2人の男との再会を喜び
ガッチリと抱き合った。


胸に下げたタグが
少し熱くなったような気がした。


大地よ お前が生きていたら
お前はどんな男になっていただろうか。


皆で墓前にて例のTシャツに着替える。
ちょっと小さくなってしまったが
まだ着れないことはない。


ピチピチのTシャツを皆が着たところで
黒部組の法被を着た男が
おい お前ら 川原を見ろよと指差す。


皆 何事かと思って
そちらへ目をやると
大きな爆音と共に花火が打ち上がった。


おいおい 警察に許可は取ってあるのか?
と 学者風の男が訪ねる。


てやんでぇ兄者 心配するこたぁねぇよ
今日は特別な日だ
うちの舎弟共に上げさせてんのよ。


彼に付き合わされる舎弟達も
たまったものではないなと 皆苦笑いしたが
当の本人は得意気で
昼間の花火もたまには 乙で粋なもんだろ
と 意気込んでいる。


墓石の横に体育座りで
笑って傍観している大地が
確かにそこにいる気がした。


普通子供は花火には驚いて泣き出すはずなのに
里子は不思議と キャッキャキャッキャの大はしゃぎ。


そんな里子を眺めて
ニコニコ顔の里佳を尻目に
僕は ヤレヤレ どいつもこいつもという
呆れ顔をしてみせた。


大地よ 僕達は お前の言う通り
一生懸命に日々を送っているよ。

とても幸せな日々を。


そして 皆で墓前にヒマワリの植木鉢を供えた。


ヒマワリは 力強く
お天道さまに向かって
花を咲かせていた。


墓石を囲んで
僕達は円陣を組んだ。


法被を着た男が怒声にも似た
掛け声を上げた。


ハックルベリーフェロウズよ 永遠なれ!!
俺達の友情よ 天まで届け!!


僕達もそれに続けて同じ叫び声を上げた。


聞こえたかい?大地?
きっと天まで届いたはずだ。


初めてやったときは
ちょっと恥ずかしかったけれど
毎年やっていると これがないと締まらない。


さーて 飲みにでも行くか
今日は仕事はなしだ そうだろ健児?と
2人の男が同意を求めて来る。


里佳が 仕方ないわね
帰りの運転は私がするからと
諦めの表情を浮かべる。


男達は肩を組んで 里子を高々と担ぎ上げて
肩車をすると 丘を降り始めた。


先に階段を降りて 手招きする大地が見えた様な気がした。








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