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<7> 次の日 今度はプールへ行く前に 大地の家に寄ってみた。 しかし 留守のままだった。 そのまま 学校へ行き プールが始まる前に 職員室へ行ってみた。 僕達6年1組の海原先生は まだ若いし どっちかというとお姉さんのような感じだ。 しかも美人なので生徒からの人気も高い。 僕は特別な意識はしていないが クラスメイトの男子には ラブレターを書いたアホもいる。 隣の6年2組は悲惨極まりない。 担任は今野末吉というおっさん暴力教師で あだ名は 歯が出ているので デパ吉。 この間も生徒が1人殴られて 歯を折られた。 何が末吉なもんか きっと彼は地獄行きだし むしろ 大凶に改名したほうがいいと 皆言っている。 その殴られた生徒ってのは実はゲンなんだけどね。 だから あいつの前歯は 差し歯だ。 授業中に2階の窓から飛び降りて 窓下の樹木に立小便して その後は 校長室に忍び込んで そこで煙草を吸って殴られたらしい。 彼らしいと言えば 彼らしい。 義務教育の小学校でなければ すぐに退学なんじゃないだろうか。 それで 親方がデパ吉に何て言ったかというと 息子のバカが直るなら いくらでも殴ってやって下さい と 言ったそうだ。 もし僕が同じような目にあったら 父は先生に何て言うだろうか? 最近 父とは関係がうまく行っていないので 家ではほとんど会話しないし 余り考えたくない話題だ。 でも母さんと太児に何かがあったら 長男の僕が絶対に守ってやるつもりだ。 父に負けない男に絶対になってやる。 職員室へ行くと いつも通り清潔感溢れる海原先生がいた。 髪は綺麗な黒髪で後ろに束ねられている。 大人の女性特有と言えばいいのか 表現しにくいのだが とても いい匂いがする。 身にまとっているのはジャージだが きっとドレスとか着たら 凄く綺麗なんじゃないかと思う。 水着姿も どう表現していいのか分からないが 明らかに体つきが クラスメイトの女子とは違うので 妙なドキドキ感に包まれることがある。 漫画雑誌の表紙にあるような水着を着た グラビアアイドルを眺めている感覚に良く似ている。 それゆえに プールの時間は 溺れた振りまでして 何かと先生に抱きつこうとする男子生徒もいる。 僕はそこまで興味がないが その美しさゆえに たまに大人の女性っていいなぁと 見とれてしまうときがある。 そんなときに限って 何を見とれているの?と 里佳に 足をムギュっと踏まれることが多い。 美人で真面目な先生なので 女子からは嫉妬染みたやっかみは ときたまあるが 学級委員の里佳とは 何故か仲がいい。 先生は目の前のデスクに向かって 何かの書類に目を通している。 僕の存在に気づいたらしく 里佳ちゃんとは仲直りできたの? と いきなり聞かれた。 チキショー 里佳の奴 先生にもそんな話までしてるのかよ。 僕は大地のことを聞きに来たのに 言葉に詰まってしまった。 どもりながら お、俺 ちゃんと あ、あやまったよ とだけ答えた。 そう 良かったわね 先生はいつもの綺麗な笑顔で ニコッと真っ白な歯を見せた。 先生は一言だけ答えると 再び書類に目を通し始めた。 忙しそうなので 少し声をかけることに気が引けたが 大地が心配なので 口を開いた。 『あのさ 大地のことなんだけど先生何か聞いてる?』 大地君がどうかしたの? 先生も何も知らないようだ。 色々事情を先生に話した。 そう それは心配ねぇ。 基本的に夏休みのプールは 来たい子だけが来る仕組みに うちの学校はなっているから 特別 欠席の連絡も要らないのよね。 だから 大地くんのお宅からは 何の連絡も来てないわよ。 そんなに健児君が心配しているならば 先生も 大地君のお宅に電話してみるわ と 協力的なことを言ってくれたので ホッとした。 夏休みも あと3日しかない。 プールが終わると 大地の家に寄ったあと 双子と一緒に 基地作りに励んだ。 材料のほとんどは ゲンが家の資材置き場から盗んで来る。 その度に 親方にはどやされるみたいだが ゲンの爺さんが そこにいつも仲裁に入って 孫の好きにさせてやれ 将来大工になるんなら 役にも立つだろうと 親方をなだめていると ロクから聞いたことがある。 親方もどうやら爺さんには頭があがらないらしい。 そういう家系なのかも知れないな。 きっと昔は親方も暴れん坊で 爺さんに怒られていたのかも知れない。 ロクの話だと 爺さんも昔は棟梁だったし 火消しとしても有名だったらしい。 木の上の基地は 前に開いた穴も塞いだし 屋根もほぼ出来上がって あとは うまい具合に窓を作りたい。 ロクが本を読んでいて あまり作業をしないので ゲンが怒り出して また 兄弟喧嘩が始まったが 僕は作業に集中したかったので 外でやってくれと言ったら 2人とも冷静に戻って 協力的に作業してくれた。 帰りにも大地の家に寄ったが 誰もいなかった。 何とか夏休みを終える1日前に 基地は3人でどうにか仕上がった。 傍から見たら汚らしくみすぼらしい小屋かも知れないが 僕達にとっては それは立派な城であった。 大地がいないのは寂しいけれど 3人で駄菓子を一杯買って チェリオで乾杯した。 ときわ商店のウメ婆さんもどういうわけか 基地の落成を祝ってくれて 今日はサービスだよと 駄菓子を無料で提供してくれて いくつか好きなもんを 取っていいと言ってくれた。 じゃぁ 全部と ゲンが全て取ろうとすると 調子に乗るんじゃないよと ウメ婆さんに引っぱたかれていた。 そして基地内に何もないのも寂しいし 学校の向日葵畑から 大地の代わりと言っちゃなんだが 大地の育てていた向日葵を失敬して 鉢植えに植え変えて 大地の代わりとして飾ってみた。 そして ロクが一番夢中で作った本棚にも 彼の愛読本である ジャンプやマガジン、 サンデー、チャンピオン コロコロやボンボンで一杯にした。 なぁ 大地はどうしたんだろう? めったに口を利かないロクが ボソっと言った。 3人とも一番心配していることなので 皆 無言になってしまった。 きっと 登校日には元気な顔して来るよ。 と 僕は2人に言った。 >NEXT <BACK |