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<18> 病院からの帰り道 双子と別れてからは 里佳と二人っきりになり 大地をさっき休ませた川原の土手を 歩いていた。 ねぇ 手繋いでもいい? と 突然僕の手を握ってきた。 ぶっ それもう握ってんじゃん? と 僕が言い返すと 彼女は ヘヘヘと はにかんでいた。 4人はあんなに強い友情で結ばれていて 素敵だね と里佳は羨ましそうに言った。 違うよ 僕達は5人だよと 言い返した。 今日だけ特別じゃないんだ と 里佳はホッとした様子でこちらに顔を向けた。 そうじゃなければ ポストなんて作らないし 里佳に手紙も書かないさ。 そうだよね。 急に里佳は 肩を揺らし咽ぶと 泣き出した。 何だお前 そんなに嬉しいのか? 首を縦に振ると 私も男に生まれたかったなぁ と 泣きながら呟いた。 男だとか女だとか関係ないだろう? 僕達は仲間だし 男と女である前に1人の人間だろう。 そんな物に拘る必要なんてないよ。 里佳は里佳だし もっと自然に振舞えばいいんじゃないの? 僕は思うがままに自分の意見を述べただけなんだか 里佳はいたく その考え方に感じ入ったようで さらに 涙を流し 僕の胸に飛び込んで来た。 ギュッと僕を抱きしめているのかといえば しがみついているようにも感じた。 僕の胸に顔をうずめていたかと思えば 今度はジッと僕の顔を見上げている。 泣き虫だなぁと 人のことは余り言えないが 涙を指先で拭ってやっていたら その瞬間 余りにも突然で不意を突かれた。 里佳はスッと 唇を僕の唇へ押し付けてきたのだ。 僕はビックリして 目を閉じてしまった。 テレビドラマや映画で観る男女のキスは いつも女性が目を閉じて そこに男性がキスをするのに 全く逆になってしまった。 それが正しいキスの仕方だと思っていたし 何か こっ恥ずかしくなってしまった。 赤面しているのも また 急にかき始めた手の平の汗も 里佳に悟られたくはなかった。 ギュっと強く彼女を抱きしめることで 里佳の注意をそらした。 しかも 初めてのキスは甘いと 良く聞いてはいたが 里佳の涙が 僕の口元にも流れて来て えらく しょっぱいキスだった。 なんだかイメージとのギャップがありすぎて 僕は 一生涯 このキスの味を忘れないだろう。 しばらく 僕達2人は ジッと 唇と唇をただただ 重ね合わせていた。 とにかく唇は重ねあったまんまだったし 僕は初めてのキスで呼吸がうまくできずに 鼻息をフンフンと荒立てていたのは間違いない。 むしろ 途中から息苦しくて 目をキョロキョロさせてしまった。 いつ唇を離していいのか タイミングが分からなかったのだ。 息苦しさがさらに増した頃 それを見ていた里佳が クスッと笑うと 僕からパッと離れた。 さよならは言わないよ またね!! と言って クルリと身を翻すと 恥ずかしくなったのか 小走りに涙を拭いながら 去って行った。 帰る方向はお隣さんだから ずっと一緒なのに 急いで先に帰るなんて 彼女も恥ずかしかったんだろうか。 僕はふと我に帰って 明日は見送りに行くよーとだけ 両手を口に当ててメガホン代わりにして 大きな声で叫んだ。 彼女にその声が届いたのかどうか 確認できなかったが 僕は彼女が見えなくなるまで その場に立ち尽くしていた。 しかし あんなに長いキスをしたけれど 里佳は妊娠しないだろうかと心配になった。 学校の授業で男女の体の仕組みについて 習ったことはあるが どうやったら子供が出来るかなんて 詳しくは知らない。 昔 両親に聞いたことはあるが 母はコウノトリが運んで来るだの 父さんが母さんのお花畑に水を撒くだの 良く分からない説明で 濁されてしまったのを覚えている。 もし 里佳が富山で妊娠になんてなったら 僕はどうすればいいだろう。 しかも 父親になるなんて考えられないと 頭を抱え込んで その場にしゃがみ込んだ。 真っ赤に沈みかけた夕日を眺めながらの 家までの帰り道 なんで あんなに長いキスを してしまったんだと 後悔した。 川原を飛び回る夕暮れ時の赤とんぼが 秋の到来を告げていた。 >NEXT <BACK |